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    <title>幸せの契約！？</title>
    <description>小説をどんどん書いていこうと思います。
読んだらコメントをよろしくお願いします。
どんどん批判しちゃって結構ですので…。

タイトル変更しました！</description>
    <link>http://kiakata0409.blog.shinobi.jp/</link>
    <language>ja</language>
    <copyright>Copyright (C) NINJATOOLS ALL RIGHTS RESERVED.</copyright>

    <item>
      <title>８．ユグドラシル～世界樹～</title>
      <description>&lt;p&gt;「奇術師？」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;改めて真人はその男の言葉に問いかける。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「はい、そうです。奇術師です」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;奇術師なんて聞いたことない。まだ魔術師でさえもあったことがないのに&amp;hellip;。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;どんなことをするんだ！？&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「正確にいえば旅する奇術師ですが」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;正確にっていっても旅してても旅してなくても奇術師は奇術師だろうが。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「ちょっと驚いているようですね。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　やっぱり奇術師なんて言葉聞きなれていないみたいですから&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　ちょっとだけ実力行使です」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そういって男は２人から数メートル離れた場所へと歩いて行った。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;何をするんだろうか。２人の緊張感はしだいに高まっていった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;すると男は立ち止まりこちらへと振り向いた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「さぁこちらに何の変哲もない布切れがあります」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;男は懐から言ったとおり布切れを取り出した。たしかにただの布切れだ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「この布きれ、実はいろんなものを隠し持ってしまってるんですね悪い子なんですよ」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;なんだ。手品！？これって手品だよな&amp;hellip;。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「だから今からこの布をしつけないといけないんです。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　いつも強くはたくと一個ずつ何か隠しているもの出してくれるんですが&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　今日は何を出してくれるんでしょうか！？」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そういって男は右手を高く振りかざし左手に持っていた布に強くたたきつけた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;すると、地面に何か落ちた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;それを男が拾い上げる。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「今日は、なんと真人さんの電子地図でした！」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「え！？なんで？」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;思わず声を上げる。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;すると男がこちらに近寄ってきて電子地図を真人に手渡しした。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「はい、どうぞ」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「ど、どうして？」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「タネを明かしたら面白みもなんもなくなってしまう。だからみんなはいろんなものを隠すんです」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「はーい！今日の奇術はこれまでです。ありがとうございました」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;男が頭を下げる。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;いちおう、拍手しとかないと思い手をたたく。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「どうでした！？僕の奇術」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;奇術というより手品だろ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「こうやって人を驚かして楽しませることが僕の役目、僕の仕事なんです」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;つまりおれたちの世界でいうマジシャンみたいなものか&amp;hellip;。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;それを知って少しがっかりという気持ちとともに安心もした。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;これ以上脳に変な言葉を詰め込んだらパンクしそうだから。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「でも、なんで俺の名前がわかったんですか？それも奇術ってやつなんですか？」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「勘だよ！勘」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そういって、男はさっき座っていたところまで戻り再び腰をかけた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;勘って&amp;hellip;。勘じゃぁ人の名前は当てられないだろう。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「勘であてられるもんですか！？奇術を使ったんじゃないんですか？」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人は少し真面目な顔で質問する。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;その様子を見て、男もまじめな顔になり&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「さっきもいったけど、タネを明かしたら面白みもなんもなくなっちゃう。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　だから、みんなはいろんなものをいろんな手段で隠す。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　でも&amp;hellip;逆に考えてみればその隠されたものを探すのも面白いんじゃないかな&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　隠されていたものが自分自身に害のあるものだとしても&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　それでも、きっとそれは君たち自身のためにはなるとおもう。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　君たちはたまたま殺傷という箱を開けてしまった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　君たちは望んで開けたんだろう。どういう形であれ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　箱は望まなければ何一つ開くことはない。&lt;br /&gt;
　&lt;br /&gt;
　箱がほしくないならその場にじっとしてればいい。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　だけど、そうすると何も変わらないままずっとその場にいるだけ&amp;hellip;。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　箱はたくさんあるんだ。だからまだまだ君たちが望めば&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　たくさんの箱を手に入れることができる。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　今回手に入れた殺傷っていう箱もきっといつか役に立つ時がくるよ&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　この世界に意味のないものなんて一つもないんだから&amp;hellip;」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そういうと、男は立ち上がった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;男の後ろにある太陽は男とどうかしているように見えた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;いや、むしろ男が太陽だ。といっても過言ではない。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そのまま、男は後ろの太陽に向かって歩いて行った。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;右手を上げながらじゃぁなと無言のさよならをしながら&amp;hellip;。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そんな様子を２人はじっと見ているだけだった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;&amp;nbsp;&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;あの男は本当にただの奇術師だったのだろうか&amp;hellip;。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;なんだかさっきからそんなことばかり考えながら歩いていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;箱か&amp;hellip;。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;俺たちが手に入れた殺傷という名の箱は俺たちをどこへと導いてくれるのだろうか。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;俺にはまだその答えを見つけることは出来なかった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;太陽の光が目にしみる。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;俺たちはいつの間にかあの男の後を追いかける形で歩いていたのだった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;相も変わらず草原の風は強く吹き付けて草花を揺らしている。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;あの奇術師からもらった果物のおかげで空腹は免れている。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;あとは図書館へと向かうだけだ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;電子地図はこの方角を示している。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;きっともうすぐ着くはずだ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人は太陽に向かってそうだろ？っとなげかけてみた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;&amp;nbsp;&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;&amp;nbsp;&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;どこか遠くの森の中&amp;hellip;。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;木の葉の生い茂る森の中で一匹、いや１人の精霊が先を急いでいた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;重大な知らせってなんだろう。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;モ―ジは知らせの者の慌てふためいた様子を見て&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;少し不安になっていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;父上の墓に何かあったんだろうか&amp;hellip;。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;この森を抜ければユグドラシルの木までもうすぐだ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;モ―ジの足の運ぶスピードがだんだんと上がっていく。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;森を抜けた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;広い草原が広がっていて、その真ん中に世界樹ユグドラシルがたっている。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;ユグドラシルは空高く伸びており、その先端を見たものはいまだにいない。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;雲を突き抜けてはるかかなたまで伸びているのだから。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;その木に向かってモ―ジは全速力で向かっていった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;モ―ジが世界樹までたどり着くと、兄のマグニが出迎えた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「早く来るんだ！モ―ジ」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;マグニの表情を見て、モ―ジはただ事ではないと察し、急いで世界樹の中へとはいって行った。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;世界樹の中は大きな空洞になっており、その中でモ―ジやマグニたちは生活をしている。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;世界樹の入り口の大きな木製の扉が閉まった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「きましたか！モ―ジ様」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「何事なんだ！？」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;年老いた男がモ―ジを急いで会議室まで案内する。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「実はとても大変なことが起きてしまいまして&amp;hellip;」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「それはなんだと言っているんだ！」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「とりあえず、会議に出席なさってください。そうすればだいたいのことはわかるかと」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そういうと、その男は大きな扉を開けた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「あぁモ―ジ様がいらっしゃった」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「モ―ジ様だ」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;モ―ジが会議室に入ると、一部の人々がモ―ジの帰宅を待っていたかのように&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;喜んでいる。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;会議室は真ん中に大きなテーブルがあり、その周りに人が座っている状態だった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;一番奥にいるのがモ―ジの母、ヨルズだ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「モ―ジ、座りなさい」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;ヨルズが一人険しい顔をしながらこっちを見ていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;モ―ジは母の言われたとおりに席に着いた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;隣にいた兄のマグニにモ―ジはささやいた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「いったい何が起きたというんですか」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「あぁ、実はわれわれの子孫が住んでいたというアルフヘイムに莫大な力の反応を探知し&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　検査役がその力の元を調べたところ&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　われわれの英雄オーディン様の魔法反応が出たんだ」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「え！どういうことですか！？」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「つまり、われわれのおじいさまがまだ生きていたということになる」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;モ―ジとマグニの祖父、オーディンは精霊たちを&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;この地へと導いたいわば精霊たちの英雄といわれている人だ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;だが、精霊たちをこの地へと案内してからオーディンは結婚し、子供を産み&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;どこかへと消えてしまった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;だが、今日ここにオーディンが生きているという知らせがきて&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;精霊たちは驚きふためいているのだった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;この世界樹の葉はすべてオーディンの魔法の結晶だと言われている。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;その葉っぱと同じ魔法の波動が検出されたのだ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;では、なぜ今となってオーディンの魔法の波動が現れたのだろうか&amp;hellip;。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「みなさん、静粛に！」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;ヨルズが会議室内を治める。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;モ―ジの父、トールが死んでからというもののヨルズがずっと&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;この地を治め続けている。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「さぁ、今回の事態をおさらいします。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　今朝検査役が月に一度の九つの世界の状態を調べているところ&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　われわれの子孫が住んでいたといわれるアルフヘイムに英雄オーディンの&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　魔法反応が検出された。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　オーディンはもう何百年も前の精霊。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　しかし、今こうしてオーディンの魔法反応が現れたということは&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　オーディンが復活したということになる。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　これは我々にとってはとてもありがたいことだ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　しかし、今のオーディンの状況がどうなっているのかまでは確認できない。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　よってアルフヘイムにわが子供たちを派遣し、オーディンの無事を確認し&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　この世界樹ユグドラシルまでお連れになるということでどうかな？みなさん」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;え！？ちょっと待ってよ。なんで俺が行くことになるんだ？&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;モ―ジは兄に助けを求めるが兄のマグニは決心を固めたらしい。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;まっすぐ前を向いていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;会議室内が騒がしくなっていった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;賛否両論が飛び交い、議決は明日にすることになった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;会議が終わり、世界樹ユグドラシルから一人早々に出て行った若者がいた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;モ―ジだった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;モ―ジは母ヨルズの意見に不満を抱いていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;なんで俺なんだろう&amp;hellip;。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;モ―ジは父トールの墓へと向かっていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;トールの墓はユグドラシルから離れた森の中にある。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;さっき、モ―ジはそこにいたのだった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;というより、いつもあの場所にいる。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;なんだか落ち着くんだ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そうやっていつも父の墓の前で昼寝をするのがモ―ジの日課だ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;もう日が暮れてあたりも暗くなり始めていたところだったが&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;無意識のうちにモ―ジの足は父の墓へと進めていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;しばらく歩き、父トールの墓についた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;父の墓は神秘的な場所で、夜に来ると月が墓石を照らし&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;昼に来ると太陽がいつも墓石を照らしていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;見上げるほどの大きな墓石が絶壁にもたれかかってたっている。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;その墓石の前にちょうどいい柔らかさの草花が生えており&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そこでいつもモ―ジは昼寝をしている。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そのいつもの場所であおむけに寝転がると&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;木々の間から無数の星空が見えていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;きれいだなぁ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;モ―ジはこのまま全部忘れてこうして寝転がっていたいと&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;思っていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;モ―ジの父トールはそれはそれは勇敢な戦士だった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;何度もこの地の危機を救ってきた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;祖父の血を受け継いでいるだけはあるとみんな感心していた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;父はいつも言っていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「幸せって何か？そう考えたことはないか？&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　幸せは目に見えるものじゃない。感じるものだ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　わしはそこまでしかわからない。&lt;br /&gt;
　　&lt;br /&gt;
　だが、今わしはとっても幸せなんだ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　どういうことかわかるか？モ―ジ、マグニ、シヴ」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「わかりませんよ、お父様」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「ハハハ、そうか&amp;hellip;おまえらもいつかわかる時が来るその時までの辛抱だ」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そういって父はおれたち三人の頭をなでて戦場に向かっていく。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;その時のおれは今から死ぬかもしれないというのになんで幸せなんだろうか。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そう思っていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;今もそうとしか思えない。結局わからないことばっかり残していって&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;しんじゃうんだから&amp;hellip;。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;モ―ジは父の墓を眺めながらそう思った。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「あ！やっぱりここにいた」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;その声に反応してふと振り向くと、１人の少女がこちらへと向かって歩いていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;シヴだ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;シヴはモ―ジの妹だ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;いつもどこで何をしているのかわからないやつなんだけど&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;ときどき、こうしてこの墓場で会うことがある。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;性格は温厚。育ちがいいせいか少し天然も入っているが、自分の妹ながらなかなか可愛い。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;白いきれいな髪をしており肩ぐらいまで伸びている。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;くせ毛なのか髪がカールしているが、それもお嬢様らしくていい。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「今日はここで何をしているの？」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「いつもと同じ、昼寝だよ」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「もう昼じゃないよ。昼じゃないのに昼寝できるなんてモ―ジってすごいのね」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;何言ってんだ。こいつは&amp;hellip;。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「あぁ、ごめん昼寝じゃなくてねっ転がってるだけだった」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「なんだ。そうだったの！ねぇ私もねっ転がっていい？」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「あぁ、いいけど」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そういって、モ―ジの隣にシヴがねっ転がった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「おじぃさまの魔法反応が出たんだってね」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「そうだけど、何で知ってるんだ？」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「お母様がおっしゃってたの」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;微笑みながらシヴが言った。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「そうか&amp;hellip;。じゃぁおれがアルフヘイムに行くってことも知ってるのか？」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「うん、知ってる。だから今日はお父様に二人の無事をお祈りしようかと思って」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;もう、お母さまは無理にでも俺たちは兄弟を行かせる気なのか&amp;hellip;。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;なんでだろうか。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「なぁ、シヴ。なんでお母様は俺たち兄弟をアルフヘイムに行かせたがってるんだと思う？&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　俺たちじゃなくても他にも有力者がいっぱいいると思うんだ」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;少し、間が空きシヴが口を開いた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「お母様にもお母様なりのお考えがあると思う。きっと&amp;hellip;。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　そうでなきゃ、かわいい息子たちをあんなところになんか行かせはしないわ」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「そうだよな&amp;hellip;」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そういって、二人はしばらく間空に浮かぶ星たちを眺めていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;明日の会議ではきっと無理矢理にでもお母様は俺達兄弟をアルフヘイムに向かわせる。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;お母様はなにを考えてなさるんだろうか&amp;hellip;。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;モ―ジはそのままその場に眠りについてしまった。&lt;/p&gt;</description> 
      <link>http://kiakata0409.blog.shinobi.jp/%E7%AC%AC%E4%B8%80%E7%AB%A0/%EF%BC%98%EF%BC%8E%E3%83%A6%E3%82%B0%E3%83%89%E3%83%A9%E3%82%B7%E3%83%AB%EF%BD%9E%E4%B8%96%E7%95%8C%E6%A8%B9%EF%BD%9E</link> 
    </item>
    <item>
      <title>７．マジシャン～奇術師～</title>
      <description>&lt;p&gt;「まだなの！？」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;早月の声が何もない草原に響き渡る。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;しかし、その声はさっきから吹いている強い風によってすぐにかき消されてしまっていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「しょうがないだろ。地図だともうすぐなんだからがんばれよ」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「がんばるって言ったってねぇ&amp;hellip;」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;２人はもうだいぶ長いこと歩いた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;もうすでに２人はくたくたで食料もそこがつきそうになっていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;早月はがまんしきれなくなり、歩きながら自分がユダからもらった食料の&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;最後の穀物を口に運ぶ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「おい！おまえそれが最後の食糧じゃなかったのか！？」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人はその様子を見て体を後ろのほうで穀物を食べている早月のほうへ向けていった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「だっておなかすいたし&amp;hellip;それにこれまずいし&amp;hellip;」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そういいながら立ち止っている真人の横を早月が追い越して行った。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;出発の時に向かう方向へとあった太陽はすでに向かうべき場所とは反対の場所へと移動していた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;あたりはすでに暗くなり始めており、オレンジ色に草原が染まっていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;本当につくのだろうか&amp;hellip;。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人は自分の手に持っている電子地図を見ながら不安に駆られていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;しばらくすると、あたりは完全に暗闇に包まれた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;２人は歩くのは危険だと判断し、ここで野宿することにした。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;野宿といってもまったく二人には野宿の経験がなく、さらに電気も火も食料も&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;ない状態だったので、ただそばにある岩にもたれかかっていただけだった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;どこか遠くから獣が遠吠えをしている。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人の手にもっている電子地図の照明の光だけが暗闇の中で光っていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;その光は今にも暗闇に押しつぶされそうに窮屈そうにひかっていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;２人はそんなひ弱な光の近くに集まっていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;ふと、空を見上げると満天の星空の世界が広がっていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;埼玉では見ることができない代物だ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;流れ星がいくつも流れてきれいだった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;月は地球ではないので見つからなかったが、それでも貴重な体験だった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;その時、ふと早月がなにかに気づき真人の手に持っていた電子地図の電源を切った。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「なにするんだよ」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「しー」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;早月は真人の口を強く押さえこみ、静寂の暗闇の中耳を澄ました。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そのとき真人もようやく早月の行動の意図が読めた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;足音がするのだ。草を踏みしめる足音が&amp;hellip;。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人は腰に掛けてある剣に手を添えた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;昨晩と同じ緊張感を感じていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人は緊張しつつも、あの時早月に言われた言葉を思い出す。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;『帰るんだろ！なら行くぞ』&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そうだ。俺は元の世界に帰るんだ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人は再び決心を固め、敵の様子をうかがっていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;腕輪のスイッチを入れた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;その時、暗闇の中で地面を強く蹴る音がし黒い物体が二人の前にとびかかってきた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;２人は驚嘆し、その拍子に剣を引き抜いた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;見事真人の剣が黒い物体のからだを引き裂いた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;初めて肉をひきさく感覚。剣を握っていた両手が肉の弾力に負けそうだ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;剣が黒い物体の肉体をすべて引き裂くと、黒い物体は地面に鳴き声をあげながらのたうちまわった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;その声を聞き、真人は黒い物体の正体を獣と判断した。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人は安心した。もし、これが人だったらどうしようなんてことも考えていたからだ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人が剣をしまおうとすると真人の腕輪をしている右手が勝手に動き出した。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;よくみると腕輪が緑色の蛍光ランプを発光している。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;次の瞬間真人の右手は本体ごと動き出し、地面でのたうちまわっている獣に&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;襲いかかった。剣の刃先は何のためらいもなく、周りにある風を引き裂くように&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;まっすぐに獣に向かっていった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人はその光景に目をそむけ、早月も同じようにした。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;獣の嘆き声があたりに響き渡った。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;この声は風でさえも消し去ることはできなく、あたりに何回も響き渡っているようだった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;やがて、その声は消え静寂な夜が再び活動を開始した。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;獣から目をそむけていた真人はゆっくりと瞼を開き、瞼の間に見える&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;右手の腕輪の蛍光ランプが光っているのを見ていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;ぼんやりとした蛍光ランプは真人の右手に付着している&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;赤い液体を生々しく照らしていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;暗闇のなかで真人は暗闇よりも恐ろしいものを見つけてしまった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;それは、真人の心の奥底にしみとなって残っていった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人が震えているとまた暗闇から足音が聞こえた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;まただ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「やだやだやだ」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人はそう呟きながらその場にしゃがみこんだ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;それを察した早月は今度は自分の番だと心を引き締めた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;暗闇から出てきた黒い影はさっきと同じような形をしていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;早月は思い切って右手で刀の形をした剣を獣に切りつけた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人同様、早月の体中に血液がとびちる。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;獣は嘆き声を出すこともなく、すんなりとその場に倒れ動かなくなった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;早月もこれは初めての経験だった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;この前、真人に喝を入れた自分がこんなに震えているなんてと思い&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;必死に震えを止めようとしていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そんなところにまた、今度は大勢の足音が聞こえてきた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;どうやら群れだろう。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;でも、もう二人にはうごいて戦うなんていう勇気はどこにも持ち合わせていなかった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;ただただこの非現実的な世界から逃げ出したい。しんでもいいと思いながら&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;このばを過ごそうとしていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;獣たちの威嚇する声が２人の耳に入っていった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そして獣たちが一斉に飛びかかってくる音が聞こえた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;もうだめだ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人が死を悟り、目をつむった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;だが、なかなか体に異常は起こらなかった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;不思議に思いながらも震えていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;しばらくすると獣たちの声は完全に消え、今度こそ元の静寂な夜にもどった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;だが、真人も早月もまだ震えが止まらずただ生きていることだけが精いっぱいだった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;誰かが肩に手を置いた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「大丈夫かい？」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;おそらくさっき、おれたちを助けてくれた人だろう。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;その手にはぬくもりがあり、心のシミを取り除いてくれるような気がした。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;取り除いてくれればいいのに&amp;hellip;。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人はそのまま、その声の主の懐へ倒れこみそのまま気を失ってしまった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;&amp;nbsp;&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;&lt;br /&gt;
真人は暗い闇の中で一人立っていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;『ここはどこ？』&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;あたりを見回しても誰もいない。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;足には何もはいていない。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;何もない、だけど何かが足に触れている感覚があった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;足元を見てもやっぱり何も見えなかった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;なんだか怖くなった真人は前へと前進した。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;足は何か抵抗があった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;それでも進んでいった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;暗闇の中だからまっすぐに進んでいるのかはわからない。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;この場所がどこかさえもわからない。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;『進んでいる方向が行くべき方向なのかもわからない』&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;『俺がだれで何者なのかもわからない』&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;『俺は誰だ？』&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;『俺は何でここにいる？』&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;『何のためにここにいる？』&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;『何のために生きている？』&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;『なんでこんなことしているんだ？』&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;『何で進むんだ？』&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;『何で歩くんだ？』&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;『何でいきてるんだ？』&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;『わからない、わからない、わからない』&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;〈おまえは何かを殺すために生きて、殺すために進んでいる〉&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;『そうなのか？』&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;〈あぁ、そうだ。ほらおまえは殺しただろうこの前獣を〉&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;すると、歩いている真人の前に獣を殺している場面が映し出された。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;『違う、俺は殺す気はなかったんだ』&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;〈殺す気はなくても殺しているんだ。おまえは殺したんだよ〉&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;『やめろ！俺は殺してない、殺してない、殺してない』&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;〈殺してんだよ。ほら、こいつに見覚えがあるだろう〉&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;足にあった抵抗が強くなり、後ろへと引きずり込まれていった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;振り向くと見覚えのある獣がいた。この前殺した獣だ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;その獣は大きくなっていき、やがて真人を丸のみできるほどまでに大きくなった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;『やだやだやだ』&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人は必死になって逃げようとするが、必死の抵抗も空しく&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;後ろに引きずり込まれていった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;やがて大きな獣は大きな口を開けた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;『やだ！やだ！やだ！』&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;〈おまえは殺したんだよ！〉&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;その声とともに真人はその獣の中に吸い込まれていった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;&amp;nbsp;&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「やだ！」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人は大粒のあせをかきながら、叫び声とともに目を覚ました。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;周りを見てみると、元いた草原が広がっていた。真上には太陽が昇っていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;夢か&amp;hellip;。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;ほっと胸をなでおろす。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;ふと、耳を澄ますと音楽に乗って歌声が聞こえてくる。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;ギターのような音色で単調なリズムを繰り返しているところに歌詞を入れているだけの&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;歌だった。だけど、なぜかその歌に引き寄せられるように&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;音のするほうへと向かっていった。少し歩くと少し大きな岩の上に人が座っていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;【空想の朝　幻想の夜&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　繰り返されていく嘘偽り　今日も朝がきて&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　少年は目を覚まし右手のぬくもりを確かめる&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　虚構で固められたこの世界から逃げるため　自分がいるべき場所へ帰るため&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　右手に残ったわずかなぬくもりを手に少年は走り出す&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　このぬくもりの主を　探し&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　このぬくもりの主を　求め&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　少年は走り出す　一つの約束を右手にこめ　走り出す&amp;hellip;】&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人がその歌に聞きいっていると、急にその曲は止まってしまった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「目覚めましたか」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;歌っていた男の人がこちらを向いてほほ笑む。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そのほほえみに真人も答える。ほんの数メートルだけある二人の間を風が吹き抜けた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「大丈夫ですか？」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;この声は&amp;hellip;。たしか昨日に聞こえた声。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;ということは、この人が助けてくれたのか？&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「あまり大丈夫そうじゃありませんね。もう少し安静にしてたほうがよさそうです」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そういって、その男は岩から飛び降り真人のほうへと向かっていった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;その男は体に白い布をまとい、腰には短剣が装備されていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;きっとあれで、あの獣たちからおれたちを守ったんだろう。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;右手にはウクレレほどの大きさの楽器が握られていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;男はにこやかな表情を浮かべながら真人の肩に手をおく。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そして真人をさっき眠っていたところまで連れて行った。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;やっぱりその手は暖かかった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;その男に連れられ元いた場所へと帰ってみると&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;早月が目を覚ましてぼんやりしていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「あなたも目覚めたんですね」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;男がそういうと、近くにある男が使ったであろう焚き火のところまで&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;行き、腰をかけた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「こちらへどうぞ」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;２人は言われるままに焚火の近くまで行き、腰をおろした。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「おなかがすいているでしょう」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そういって、男は近くにあった大きなかばんから&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;果物を差し出してきた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「いいんですか？」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人がいうと&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「いいんですよ。まだまだいっぱいあるし」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;それならと２人はその果物を受け取り、かじりついた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;しばらく食べ物を食べていなかったのでその果物はよく体にしみわたった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;それよりもこの人は何者なんだろうか。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人はそれが気になっていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;悪い人じゃないっていうのはなんとなく感じていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;でも、なんだか怪しい。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そうやって真人が顔をしかめていると&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「僕のことが気になりますか？」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「え！？」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「ですから、僕が怪しいって思っているでしょう」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;男の唐突な発言に驚き戸惑っていた真人だったが、たしかに気にはなっていたのでうなずいてみた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「やっぱりそうですか。いや、僕なんか人の心を察しやすいというか敏感なんです」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;男が得意げに言った。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;なんだこの人&amp;hellip;。真人はなんかこの人のイメージが崩れつつあった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「ですからね。いろいろとお得なんですよ。たとえば&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　市場とかで値引きとかするじゃないですか？というよりあなたたち市場って知ってますよね？&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　商人たちが自分がとってきた果物やらなんやらを売りさばく場所ですよ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　そこでですね商人に言うんですよ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　もうちょっと安くなりませんか？って。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　それが一回目はだいたいのお店ではねさげしてくれるんですが&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　二回目以降になるとなかなか値下げは難しくなっちゃうんですよね&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　いやぁ、まいっちゃうんですよ&amp;hellip;」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;長い&amp;hellip;。話が長い。この男よくしゃべりすぎだろう。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「で、ですね！ここで僕の直感がよく当たるんですよ&amp;hellip;」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;いつになったら終わるんだろうか。もうすでに真人は男の話には耳を傾けていなく&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;青い空を飛んでいる白い鳥に目を向けていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;あぁ。なんだか目の前がぼんやりと&amp;hellip;。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「ちょっと！聞いていますか！？」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「あ！はい。すいません」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;声に反応して返答はするけど、やっぱり眠い。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「それがまた素晴らしい具合に決まるんですよ。で、ですね&amp;hellip;」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;まだ話は続くのか。長すぎだろ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「というわけなんです。以上です」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;終わった。長かった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「それでは、本題に入りましょう」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;おせぇよ！心の中でつっこみをいれた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「僕は、旅する奇術師なんです」&lt;br /&gt;
&amp;nbsp;&lt;/p&gt;</description> 
      <link>http://kiakata0409.blog.shinobi.jp/%E7%AC%AC%E4%B8%80%E7%AB%A0/%EF%BC%97%EF%BC%8E%E3%83%9E%E3%82%B8%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%B3%EF%BD%9E%E5%A5%87%E8%A1%93%E5%B8%AB%EF%BD%9E</link> 
    </item>
    <item>
      <title>６．アンダーグラウンド～地中～</title>
      <description>&lt;p&gt;炭酸好きな光男お兄さま、元気にしているでしょうか。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;私は元気です。素晴らしい自然の中で一生懸命にお兄さまのいる元の世界へと&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;戻る手がかりを探しているところです。まだまだこの世界には知らないことがたくさんあります。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;魔法のこと、精霊のこと、私にはまだお兄さまが冬に妹に夜中買わせてまで炭酸のジュースを&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;飲む理由がよくはわかりません。ですが、きっと今思っている不安や疑問も徐々に&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;いい方向へと進んでいくと思います。なんだか頼りない男が一名旅に同行しておりますが&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;きっと彼も立派に成長をしてくれることでしょう。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;お兄さまの健康を祈っております。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　早月より&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;２人は魔法都市を出発していた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;魔法都市の外にはさっきの近未来の世界とは違い、壮大な草原が広がっていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;青い空、白い雲、輝く太陽、きれいな小川、きれいな空気。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;絵にも描いたような素晴らしいこの景色。さっきまでいた近未来の暮らしにさえ&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;寂しさを覚えるほどだった。さっきの衝撃的な出来事を洗い流して&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;もらえるという錯覚に陥るほどだ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人はほんの数時間&amp;hellip;。この世界に来てからは時間もわからないのだがほんのちょっと前の&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;出来事を思い出し、また感傷にひたっていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;後ろから追い風が吹いてきた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;その風はまるで、真人の後ろめいた心に鞭を打つかのように強く吹いている。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;さっきのあいつと同じ&amp;hellip;。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人は後ろから吹く追い風の鞭など気にせずに再び感傷にひたっていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人が吹き抜ける風をにらみつける。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「キャー」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;すると、後ろのほうから何やら聞き覚えのある声がした。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;さっき俺の左ほほを思いきりひっぱたいた漫画女。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人は叩かれた左ほほを右手で押さえながら声がするほうをにらみつけた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;すると、一瞬で真人の視界が暗くなった。真人は気が動転し、尻もちをついた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「おぉ、ナイス！」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;何がナイスだよと思いながら、真人は視界が暗くなった原因となる物体を顔から&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;はがした。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「なんだよこれ」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人ははがした物体になにやら文字が書かれていることに気がつきその文字に目をやった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「炭酸好きな光男&amp;hellip;」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そこまでいったころには次の文字が読めない状態になっていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「何読んでんだよ！」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;早月が声を張り上げる。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「え、だって気になるじゃん」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人は改めて負った右ほほの痛みに耐えながら必死に答弁する。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「さっきユダさんから小さい日記帳もらったの。日記つけようと思ってね」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;こんな事態なのに、こいつは何をしようとしているんだ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「そしたら昨日とか今までのぶん書いてないなって思ってあそこの切り株で日記つけてたってわけ」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;早月は少し遠くに見える少し大きなきりかぶを指さしながら言った。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;なんかのんきだ。この景色に負けないぐらい壮大に元気だ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「ユダさんったら日記帳に変な紙挟んでおくからそれに気がつかないで風が吹いて&amp;hellip;」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そこまで聞いたらもうきかなくてもわかった。真人は早月に右の掌を突き出し&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;ストップの合図を出した。するとふと、真人は思いついた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「でもさぁ、魔法都市にある日記帳なんだから紙に直接書き込むなんてことしなくても&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　携帯みたいな魔道具があるんじゃないの？」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そう、わざわざそんな古典的なことをしなくてもあそこは魔法都市なんだ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;携帯のような魔道具ぐらいあってもいいはずだ。それでピピピっと日記をつけていけばいいじゃないか。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人は心の胸の奥に確信を抱いていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「手書きがよかったの！だからユダさんに無理いってお願いした」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;早月は日記帳らしき厚くて小さな本を自分の内ポケットにしまった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;内ポケットあるのかよその服&amp;hellip;。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人は早月の服をじーっと眺めていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「なによ、変な目で見ないでよね」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;その様子を見た早月が身を引きながら言った。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そういわれ、真人は立ち上がりあわてて前を向いた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;立ち上がってみると相変わらず風が強く吹いていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;今度は心ではなく体に鞭を打っているのだろう。真人は早月よりも少し先に足を運び始めた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;&lt;br /&gt;
しばらく歩いた。ユダさんからもらった地図によるとまだまっすぐ行けばいいらしい。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;しかしさっきからずいぶんと歩いたのにまったく景色が変わらない。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;何もないのだ。さっきは感動していたが逆に何も変わらない景色を見ていると&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;うざったく感じてきた。そんなことを思いながら真人は歩いていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人の少し後ろを歩いていた早月はだいぶ疲れているみたいだ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;ペースがだいぶ落ちてきている。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そろっと休憩するか、そう思ったその時視界に大きな木が入り込んできた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;なんだ？あの大きな木は&amp;hellip;。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;この位置からみても相当大きい。そばまで行ったらどれぐらい大きく見えるのだろうか。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人がそう思いながら立ち止っていると、早月が真人を追い抜いて行った。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「ほら、早く行くよ」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;おそらくかなり身体的に疲れているのだろう。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;声には活気がなく、早く図書館にいって休みたいと顔に書いてあるみたいだった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;残念ながら図書館はあの大きな木とは方向が違っていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;なんだか興味そそられるものがあの木にはあったが&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人は体を９０&amp;deg;回転させると早月の後を追って行った。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;&lt;br /&gt;
日本国民が埼玉県と称するその土地の地下深く&amp;hellip;。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;地下鉄などの地下施設を避けて作られたそのつくりはまるで迷路のような構造をしている。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そんなへんてこな施設は鉄製でごつごつしている。しかしところどころにいろんな機能が付いていて&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;まるで侵入者の立ち入りは断じて許さないと言っているかのようだ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;日本の今の技術ではとてもじゃないがこんなハイテクな施設は作れないだろう。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;ニケはそんなとんでもない建物の中でさまよっていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;黒いパツパツとした光沢のある服を全身に包んでいた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「くそぉ、どこだ」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;まわりを警戒しながら独り言を言っていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;ニケは目の前の扉を躊躇なく開き、部屋の中を探索していた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;今は訓練中だからまだここらへんに寝泊まりしているやつらは帰ってきていない。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;ニケは頭の中に叩き込んだ予定表と自分の腕時計の時間を照らし合わせる。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;薄暗い部屋の中でニケは男くさい下着やらなんやらでちらかった床の上で足を進めていく。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;静かに、音を立てずにまるで忍者にでもなった気分だ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;ニケは部屋の奥にあるクローゼットに手を触れた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;クローゼットは周りの景観とはあっておらず木でできていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;この中にあの人がいればいいけど。ニケは毎回味わうこの緊張感がいつの間にか&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;快感に覚えてきた自分を抑えながらクローゼットの扉に手をかけた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;いてください&amp;hellip;。心の中で強く願い、音をたてないように力強く扉を開けた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;ここも違ったか。ニケが開けたクローゼットから出てきたものは汚い男の下着ばかりだった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;どんだけ下着持ってんだよ。そう思いながらその部屋を後にしようとしたとき&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「待ちな」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;後ろから声がし、後頭部に何かが突き付けられている感覚があった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;ニケは足を止めた。もっとも恐れていたことが起きてしまった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;兵士との接触&amp;hellip;。だがなぜこいつはこの部屋にいたんだ？&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;ニケの額には冷や汗が滲んでいた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「僕をどうするつもり？」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;ニケはゆっくりと口を動かした。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「どうしようかなぁ？」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;この低くて鈍い声は男の声&amp;hellip;。それもそうかここは男の寮区域なんだから。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;風が吹くことさえ許されないような空気の中、ニケはつばを飲み込み、&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;死の覚悟をした。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;幾度となくこのような場面は切り抜けてきたニケだったが&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;今回はどうも状況が悪い。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;もう、どうすることもできないのだ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「頭を思いきり打ち抜くか、それとも足の自由を奪ってゆっくり痛みつけながら殺すか&amp;hellip;」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「一つ質問していい？」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;ニケはまたしてもゆっくりと口を開いた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;慎重に、慎重にこの男に隙ができるまでの辛抱だ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「あぁ！？あぁいいぜ、後悔して地獄に行くのはなんだからな」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「なんで僕をすぐに殺さないの？」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「は！？何言ってやがんだ？早く死にたいのか？」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「違う、普通侵入者を見つけて捕獲したら拘束するでしょ！？&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　それから上司に連絡し、指示をあおる。それが普通でしょ？&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　最悪でもすぐに殺すはず&amp;hellip;。さらにいうとこの時間はあなたたち兵士は訓練の時間のはず。それに&amp;hellip;」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そこまで言ってニケは質問をやめ、男のほうを振りかえった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;兵士は急に振り返ってきたニケに動揺の表情を隠せないでいた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「あなた、なんでさっきから拳銃を握る手が震えているの？」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そこまで言うと、動揺している兵士の懐に風のように入り込み拳銃を握る手を右手でチョップし&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;兵士の拳銃を床に落としすぐさま兵士の右手を自分の右手で体の後ろに回させ右足で兵士の&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;体を押さえつけた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;兵士は情けない声を出し、床に顔面を押し付けられた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;兵士が顔を押し付けられた先には誰かの下着が落ちておりそのくさい匂いで&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;失神しそうでもあった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「すいません、すいません」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;匂いと体の痛みに耐えられなくなった兵士は必死の形相で許しを乞う。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;にらみを利かせていたニケは一安心し、兵士のもう片方の手を握り兵士の&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;右手と同じように後ろにまわした。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「な、何をする気だ&amp;hellip;でしょうか？」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「決まってるでしょ、君を拘束するんだよ」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そう言いながら近くにあった汚れた男のTシャツを手に取り兵士の両手を縛りつけた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「そんなぁ」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「あたりまえだよこれくらい。降参したからって一度は自分に銃を向けたんだからね危険人物だよ」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;情けない声を張り上げる兵士に、静かに話しかける。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「俺、実は訓練サボってたんだ。だからこんなところにいた」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「あ、そうなんだ」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そう言いながら兵士の両足を近くにあった汚いパンツで縛り付ける。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「ほら、白状したでしょ。だから許して&amp;hellip;あっおれの名前はジ―リだ」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;もう、必死になっている。ニケは足を縛り終えて、今度は口を止める下着を&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;探していた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;やっぱり下着でそろえなくちゃ。ちょっとS気が出てきたニケであった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;でも、あんまりゆっくりもしてられない。あと三十分で兵士たちが帰ってくる。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;それまでにこのジ―リとかいう男をなんとかしなくては&amp;hellip;。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;ニケは自分の腕にしてある腕時計を眺めながら思った。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「おれ、ピッキングできるんだぜ。だから助けてくれよ」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「ピッキングができるからって許されるわけないでしょ」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;ニケはお手頃な下着を見つけながら言った。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;たしかに僕はピッキングなんてできないけど&amp;hellip;。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「じゃっじゃぁ、あなた様はなんでこんなところにきているんでしょうか？」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;敬語になっちゃったよ。ちょっとおかしいけど&amp;hellip;。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「ちょっと探し物」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「探し物？その探し物を一緒に探してあげましょうか」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「じゃぁ、ジ―リさん。あなたはこの施設の隠し部屋っていうのを知ってる」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「隠し部屋？」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「そう、あなたたちの寮のどこかのクローゼットが入り口になっているんだけど」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「隠し部屋かどうかはわかりませんが、怪しいクローゼットなら知ってますよ」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「&amp;hellip;」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;予想外の返答にリアクションに困った。こんなに苦労して探しているのに&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;こんなさぼり兵士が隠し部屋の入り口らしき場所を知っているとは&amp;hellip;。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;ニケは汚い下着にも気にせずに床に四つん這いになった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「どうしたんですか？」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;ジ―リも少し驚いている様子だ。必死に顔を上げながらニケのことを見ていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「くそぉ、くそぉ、だめだ、だめだ」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;淡々とニケがつぶやく姿を見て、ジ―リは静かに顔を上げるのをやめた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;数分後&amp;hellip;。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「よし、お前をつれていく。ジ―リ」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;ジ―リはうつ伏せという姿勢の苦痛と、ニケの淡々と続く独り言と、顔面近くにある汚い下着のせいで&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;もうすでに意識はもうろうとしていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「どうした？あ、そうだった早くほどいてやらなくちゃな」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;急に態度が変わったニケにもうかける言葉すらないジ―リは黙ってほどかれるのを待っていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;ほどかれると、疲れた表情で背伸びをする。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「ジ―リ、時間がないんだ。早く僕にそのクローゼットを教えて」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「へーい」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;声に元気はなかった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「こっちです」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;元気のないジ―リに連れられながらニケは急いでその部屋を後にした。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「この部屋です」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;ジ―リに案内された部屋はさっきのジ―リがいた部屋とはなんら変りない兵士の寮の一室だった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;その部屋にジ―リはずかずかとはいっていく&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「こんな不用心な場所に本当にあるの？」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「あるんですよね、ここに」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;ジ―リは一つのクローゼットを指さしながら言った。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そのクローゼットは木製ではなく鉄製で、しかも鍵穴が扉のとって近くにあった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;たしかにこれは怪しい&amp;hellip;。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「この部屋の人たちはこのクローゼットは使わないの？」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「あぁ、使わないんですよね。鍵穴があるでしょ？鍵がなくて&amp;hellip;仕方がないんで使用していないんです」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「ジ―リみたいなピッキング能力もった人が開ければよかったんじゃないの」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「それが、ここの鍵穴かなりレベルが高いんですよね&amp;hellip;」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「レベル？」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「はい、俺達ピッキング仲間のなかでは鍵穴にレベルをつけているんです」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「１から５まであって、この部屋のレベルは４なんですよ」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「はぁー」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;ちょっと感心したような声をだした。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「では、あけますね」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そういってジ―リは鍵穴に何か変な物体をさしこんだ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「ちなみに、ジ―リはここの鍵穴は開けられるの？」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;それを聞いたジ―リがゆっくりと笑みを浮かべた顔をこちらに向けてきた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「任せてくださいよ。自分で言うのは何なんですがかなりの腕まえって有名なんですから」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そういって、再び作業に戻った。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;しばらくするとかちゃっという音が金属音がするとともに&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;重い扉が開く音がした。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;クローゼットの扉が開いたみたいだ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「あきましたよ」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;扉の前にジ―リが立っていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;ジ―リの後ろには漆黒の闇の入り口があった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;今にもジ―リをその闇の世界へと引き込もうとしているみたいだった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そのとき、兵士たちの声が聞こえた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;帰ってきた&amp;hellip;。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;ニケとジ―リの二人はあわてた。ニケはとりあえずあいたクローゼットの中に入っていった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;ジ―リはさぼったことがばれるとまずいのでニケの後を追ってクローゼットの中へとはいって行った。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;２人を入れたクローゼットはゆっくりと音を立てながらしまっていった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;&amp;nbsp;&lt;/p&gt;</description> 
      <link>http://kiakata0409.blog.shinobi.jp/%E7%AC%AC%E4%B8%80%E7%AB%A0/%EF%BC%96%EF%BC%8E%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%80%E3%83%BC%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%82%A6%E3%83%B3%E3%83%89%EF%BD%9E%E5%9C%B0%E4%B8%AD%EF%BD%9E</link> 
    </item>
    <item>
      <title>５．リカバリー～再起～</title>
      <description>&lt;p&gt;もし、あの時たたいたのではなく、切りつけていたら&amp;hellip;。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人の頭の中には今朝の残像が何度も再現されていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;布団を剣でなぎ払い、男に攻撃したこと。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;腕輪のスイッチをつけ忘れ、あわててスイッチを入れたこと。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;気がつくと男の姿はなく、カーテンが風になびいていたこと。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;その一瞬一瞬が鮮明に脳裏をよぎり、そのたびに真人の顔は血の気を引いていった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;切ってたらどうなってたんだろう。血が出てたよなきっと&amp;hellip;。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;それでもし死んじゃったら俺人殺しじゃんか。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人は自分の両手が震えているのがわかった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;眼球は座ってなく、口は釣りあげられたように開いていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「武器持ってるってことはこれから何度もこういうことがあるってことだよな」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人は自分しかいない部屋の中で消えてしまいそうな声を出していた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「お前はなんなんだよ。ついこの前までは人殺してでも元の世界に帰りたいなんて言ってたやつが&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　これくらいのことで泣いてどうすんだよ」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人の言葉のとおり、真人の眼には雫が垂れていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人は両腕で自分を抱え込みふるえながら泣いていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;膝元に涙がこぼれおち、その幅が徐々に広がっていった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;自分が怖い&amp;hellip;自分が怖い。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人の耳には部屋に入ってきた早月の足音すら聞こえていなかった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「おい、図書館に行くぞ」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;早月が真人に向って声を発した。それは力強く、静かな声だった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;だが、それに構わず真人は震えていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;急に右腕が誰かに掴まれた感じがした。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;すると、体が浮き上がり折りたたまれていた足が急に機能し始めた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;だが、真人はただ床を見て涙を流しているだけ&amp;hellip;。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;それを見た早月がつかんでいた真人の右手を離し、真人の体をベッドに突き飛ばした。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人は主人のいなくなった操り人形のようにベッドに倒れこんだ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そして倒れた真人の襟をつかみ、早月の右の掌が真人の左ほほをたたき音を鳴らした。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;その音は響き、真人にとってはどこまでも何回も続いているかのように思えた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「帰るんだろ！なら行くぞ！」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;早月は襟を再び強くつかみ、今まで聞いたことのないものすごい声を出した。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;その声は地下牢でけんかした時よりも、ビルの最上階でユダに発した声よりも&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人の心に響いた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;それだけ言うと、早月は真人の襟を離し部屋を出て行った。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人の目には涙がこれ以上増えることはなかった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人の目は動揺を隠せない様子で天井を見つめていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;帰る？そうだ帰るんだよ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;どこに？もといた世界に。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;どうして？あんな場面、二度と味わいたくないから&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;じゃぁどうするの？決まってる。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人は壁に立てかけてあった。剣を右手でしっかりとつかみ腕輪をはめ&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;目に残っている涙をぬぐい、部屋のドアを勢いよく開いた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;ドアをあけ、ホテルのロビーに向かうと早月があふれんばかりの怒りをあらわにして&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;立っていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「遅い」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;その声はさっきとは違った。いつもの声だった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「ごめん」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人は歯を出し、自分が今できる精一杯の笑顔を早月にふりまいた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「ほら、行くよ」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;これから何が起こるかなんてわからない。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;またあんな場面が来るかもしれない。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;それでも、もといた世界へ&amp;hellip;平和で安全な世界に戻らなきゃいけないんだ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;何度もあんな場面は味わいたくないから。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人は右手の剣をさやにしまい、腰に掛けた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そして２人は歩きだした。目の前の光が２人を拒もうとも&amp;hellip;。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;歩き続けた。&lt;/p&gt;</description> 
      <link>http://kiakata0409.blog.shinobi.jp/%E7%AC%AC%E4%B8%80%E7%AB%A0/%EF%BC%95%EF%BC%8E%E3%83%AA%E3%82%AB%E3%83%90%E3%83%AA%E3%83%BC%EF%BD%9E%E5%86%8D%E8%B5%B7%EF%BD%9E</link> 
    </item>
    <item>
      <title>４．ダークネスオブナイト～夜陰～</title>
      <description>&lt;p&gt;真人は寝付けないでいた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;物音一つもない暗闇の中、何も見えないはずの真上をただただじっと見つめ考えていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;これからどうなるんだろうか。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;ついさっき、ユダがおれたちにいろいろと説明してくれた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;正直よくわからなかった。自分のふがいなさにちょっとだけ後悔した。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;だが、だいたいはわかる。そうだ、自分はだめではないと自分を慰めていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そしてさらにそんなことを考えている自分は馬鹿だと改めて自分を否定する。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;あぁ、やっぱり眠れない&amp;hellip;。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;いつもは隣で親父のいびきがひどく、その反対の隣でゆずの寝言がうるさい中で寝ていた&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人にとって、この静かな環境は誰かのいじめかと思うくらいの眠るには最悪の環境だった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;それにしても、マンガ女は静かに眠れるんだな。真人は早月が寝ているはずの&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;ベッドのほうを見つめる。（何も見えないが）&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;だいたい、ゆず以外の女の人と寝るのは真人の人生の中で初めての経験だった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;きっとそれも眠れない要因の一つだろう。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人はベッドの布団の中で少々動き回った。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「うるさいわね、ちょっとは静かに眠れないわけ？」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;早月の声が聞こえた。なんだ、まだ眠っていなかったのか。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「眠れねんだよ、お前も眠れないのか？」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人は見えない早月に問いかける。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「うるさいわね、あんただって眠れてないじゃないの」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;早月の声が大きくなった。真人には早月が布団から上半身をはみ出しこちらにむかって&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;怒っているように見えた。（何も見えないが）&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「とにかく、眠れるように努力するぞ！明日は図書館に行くんだから」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人はここぞとばかりに少し大人になった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;その言葉を聞いて、早月も落ち着きを取り戻したらしい。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;静かになった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;&amp;hellip;&amp;hellip;またこの静寂が続く。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「ねぇ&amp;hellip;」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;早月の声だ。静寂を打ち破るがごとく聞こえてきた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「あんたはどこから来たの？」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;早月が枕に口をふさぎながら言ってるみたいな通らない声で聞いてきた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「俺か？俺は埼玉県」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「あら、そうなの」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;早月の声のボリュームがだんだんと下がっていっているような気がする。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「お前はどこからきたんだよ」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「あたしは、埼玉県」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「え？うそ、同じなの？」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人は思わず起き上がってしまった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「な、なによ？悪いの？」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「いや、悪くはないんだけどさ」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;早月の声が怖かったので素早く元の体制に戻った。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「兄弟とかいるの？」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「あぁ、妹がいる。ゆずっていうんだけどな」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「ふぅーん。そうなんだ。名前的にあんたとはちがってとってもかわいげがありそうだけど」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「それ、どういう意味だよ」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;思わず笑いがこみあげてきた。部屋の中が少し暖かくなったような気がした。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「お前にはいるのか？兄弟」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「あたし？いるわよ。炭酸がとっても好きで毎日必ず一本は飲んでいる兄貴が」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「へぇーいるんだ。何て名前？」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「光男」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;その名前を聞いて真人は再び笑いがこみあげてきた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「何がおかしいのよ」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「だってそれ、うちのおやじの名前」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人は笑いながら言った。それを聞いて早月も笑いだした。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;二つの笑い声が交差しあい、お互いの心を和ませていった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「お前の親父は何て名前なの？」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人は気になって聞いてみた。もしかして、親父も誰かとおんなじ名前かもなんて思っていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;だけど、なかなか返答が来ない。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「どうしたんだよ」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;笑いながら言った。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「実は&amp;hellip;あたしの父さんは母さんと離婚して出て行ったの、それで母さんはあたしたち二人を&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　養うために必死に働いて&amp;hellip;。死んじゃった」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;その声にはもうさっきの笑い声の面影はなく、ビルの最上階で聞いた泣きそうな声になっていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人は軽はずみな質問をしてしまった自分に反省し、言葉を発した。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「ごめん。悪いこと聞いちゃって&amp;hellip;」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;返事はない。さっきの静寂とは違い、なんだか重い空気があたりを漂っていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;うちの親も離婚しいるなんてとてもじゃないがこの状況では言えない。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そう思いながら、真人は一足先に目を閉じた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;&amp;nbsp;&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;目を覚ますと、あたりは薄く窓のカーテンの隙間から入ってくる太陽の光で&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;明るくなっていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;まだ、明け方か。そう思い、再び眠りにつこうと布団をかぶったそのとき&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;さっきから光がはいってくる窓の奥に人影が見えた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;その影は大人のような容姿で、こちらを眺めているかのようだった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;それに気づいた真人は早月を起こそうとしたが、あの影に気づかれるといけないと思い&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;とりあえず、近くにあった腕輪をつけ、剣を右手に握った。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;手汗がすごい&amp;hellip;。ものすごい緊迫感が真人を押しつぶそうとしていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;影はしゃがんだ姿勢を保ってなにかをやっているようだった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;俺は窓側のベッドだからまず一番最初に襲われるとしたら俺だろう。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;それなら寝ているふりをして、相手に奇襲を仕掛ければこっちにも勝機があるかもしれない。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そう思い、真人は仰向けで布団の中に剣を入れ目をつむった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;耳を澄ますと金属と金属が当たる音がする。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;その音の後に何かが外れた音がした。その音は、真人の心臓をえぐり取るかのようだった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;あと少しでくる。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;静かに窓が開く音がした。床のじゅうたんに一歩一歩足を運ぶ音が聞こえる。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人の額はもうすでに、汗が噴き出ていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;足音がとまった。今だ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そう思い、真人は眼を開くと同時に剣で布団をなぎ払った。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;案の定影の正体は真人のベッドのすぐ横にいた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人は手汗でぬれた右手の先にある剣を思い切り、その影の正体に向かって叩きつけた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;切りつけるなんていう余裕はなかった。息は荒れ、頭の中はパニック状態に陥っていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;薄明かりの中で影の正体を真人はしっかりととらえた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;顔以外はすべて黒いもので覆いかぶされている男。その手には、武器と思われる棒が握られていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人はあることに気がついた。腕輪のスイッチを入れていない。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;だからオートバトルモードが発動しない。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人はあわてて腕輪のスイッチを入れた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;しかし、その時にはもうすでに男の姿はなく真人はただその場に立ち尽くしているだけだった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そのあと、警報が鳴り早月が目を覚ました。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;部屋のドアからユダが入ってきて、２人の安全を確認した。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;早月は何が何だか分からずに寝起きの顔でたんたんとユダの話を聞いていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人も自分の右手にたまっていた手汗で剣の握る部分が濡れているのを見ていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;心臓はいまだに暴れていて、さっきの出来事を再認識させるかのように&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;カーテンが風になびき音を立てていた。&lt;br /&gt;
&amp;nbsp;&lt;/p&gt;</description> 
      <link>http://kiakata0409.blog.shinobi.jp/%E7%AC%AC%E4%B8%80%E7%AB%A0/%EF%BC%94%EF%BC%8E%E3%83%80%E3%83%BC%E3%82%AF%E3%83%8D%E3%82%B9%E3%82%AA%E3%83%96%E3%83%8A%E3%82%A4%E3%83%88%EF%BD%9E%E5%A4%9C%E9%99%B0%EF%BD%9E</link> 
    </item>
    <item>
      <title>３．コロニス～魔法都市～</title>
      <description>&lt;p&gt;「ほんとにすいませんでした」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;早月と２人して頭を下げる。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「ぜんぜんオッケーですって、そんな気にしないでくださいよ」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「でも、私首までしめちゃって&amp;hellip;&amp;hellip;」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;早月が弱気になってる所は初めて見た。なんか変な気分だ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「こんなにキュートな女の子に首絞められたんですから幸せですよ私は」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;男が笑顔で愛想を振りまく。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そう、この男。さっき早月が首を絞めていた空気の読めないハロハロ野郎は&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;この建物の責任者だとか。まったく変わった人だ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「キュートだなんてそんな」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;早月が照れてる。お世辞に決まってるだろマンガ女。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「いえいえ、ほんとに今まで見た女性の中で一番キュートですよ」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;調子に乗ってハロハロ野郎もおだてるし。きりがない。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「あのぉ、お名前を聞いてなかったんですけど」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;耐えられなくなって、話を切り出した。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「あぁ、そうでしたね。さっき申し上げたようにこの建物の責任者を務めております&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;ユダと申します。以後よろしくお願いします」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;ユダが深く頭を下げる。こちらもそれに対応して礼を返す。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「さ、ここでお話しするのはなんですから奥のほうへきて椅子に腰をおかけください。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　いろいろと長いお話になると思いますので」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;早月と真人はその言葉の指示に従って部屋の奥へと進んでいった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;この部屋の壁の三面はガラスでできており、とても高価なつくりをしている。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;床には赤いじゅうたんが敷いてあり、天井にはシャンデリラらしきものがぶら下がっている。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;観葉植物も何個かあり、いつかはこんな部屋に寝泊まりしてみたいと思うほどだった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;２人はユダに指示され、高級な社長室にありそうな椅子に腰かけた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;ユダはテーブル越しの椅子に座った。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;ユダが指を鳴らした。すると、さっきこの部屋に入ってきた扉の隣にあった&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;小さな扉からヒト型のロボットが出てきた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そのロボットの手にはおぼんが乗っており、コーヒーが乗っていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「どうぞ」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;ロボットは席のそばまで来て、そういうとコーヒーをそれぞれの椅子の前のテーブルに置いた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「失礼します」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そういって、ロボットは来たところへと戻って行った。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;２人は初めて見た大きなロボットに驚きを隠せないでいた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;やっぱりここは未来都市だ。そう思った。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;驚いている二人を見てユダは&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「すごいでしょ、うちの会社の最高傑作＜ｗ５＞です。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　まぁ前のメイドよりもよく働いてね」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「前はロボットじゃなかったんですか」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;その質問にユダは答えに戸惑っていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「あ、そうだ。早く話を進めなくちゃ」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;ユダは結局話をそらした。なにかありそうだ。とりあえずここは流れで&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「まず最初に聞きたいんですけど、なんでぼくたちはここに来たんですか」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人はその質問をさっきからずっと胸の奥にしまっていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そして、ようやくその質問を出す時が来たのだ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「ですが、その質問の前にあなた方はどこから来たのですか」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;ちょっと衝撃的な質問に２人は戸惑った。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「あなたたちがここに連れてきたんじゃないんですか」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「ですが、それはあなたがたの生命反応がわが社の地下牢に急に&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　あらわれたため、調査し、危険性がないということなのであなた方をここへと&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　招き入れようということになったのです」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「じゃぁあんたたちはあたしたちがなぜ地下牢に現れたのかわからないってわけ」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「はい、そうです」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「じゃぁわたしたちはどうすればいいんですか、帰れないじゃないですか」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;早月は席から立ち上がり、目の前のつくえを強くたたいた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「おい、早月落ちつけよ」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;少しの間、静寂が訪れた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人は早月の服をつかんで座らせようとしてみた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「真人はこのまま黙っていられるの。なんで私たちがこんな目にあわなきゃいけないのよ」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;早月は今にも泣き出しそうな声だった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;たしかに早月のいうとおり、おれたちはなんでこんな目にあわなきゃいけないのだろうか&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;俺たちがなにかしたのか？いや、少なくとも俺は普通に生活していた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;きっと早月もそうだろう。元の世界に帰りたい。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;今なら親父のうるさいお説教も、ゆずのくだらない興味本意の質問も&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そうだな、もう帰れるんだったら何回振られてたっていいさ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;母さんのことも思い出さなくたっていい。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;誰かが死んだとしても、俺は元の世界に帰りたい。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;こいつが死んでも&amp;hellip;。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人は泣きそうな顔をした早月を見てそう思った。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;胸の奥に罪悪感というものがうずめいていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;だけど、今そんなきれいごと&amp;hellip;。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;漫画やアニメのヒーローじゃないんだ、おれは。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;空も飛べないし、手から炎も出せない。ましてや見上げるほどの怪物と誰かのために&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;戦うなんてもってのほかだ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そんな命を無駄にはしたくはない。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人は座っている自分の膝の上に置いてあるこぶしを強く握りしめていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そんな二人の様子を見て、ユダは口を開いた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「すいません、こちらの情報不足です」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;その言葉を聞いて、また早月がユダに襲いかかろうとしていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「しかし、私は帰れないとは言ってはおりません。帰る方法は少なくともあるのです&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　ここはあなたがたがいた場所とは違う場所ですよ。あなたたちにとって&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　何が起こってもおかしくはないはずです。ですからそんな顔なさらないでください」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そういってユダは２人にほほ笑んだ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;その言葉を聞いて２人はなんだか心の奥のどこかに何か光るものが現れたような気がした。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;２人の表情が少し、ゆるんだ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「よかった。あなた方はそうでなくてはいけませんよ&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　最初に会った時はわざとあぁいうのりをしました。しかし、それはあなたがたを&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　和ませるためにしたものでした。見事に成功してあなたがたはいい顔してましたよ」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人にはそれがただのこじつけにしか聞こえなかったが、ユダの笑顔を見ていると&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;なんだかそうも思えなくなってきていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「これから説明することはあなたがたにとって、とても大切な話です。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　ですから、よく耳を澄まして聞いてください」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;ユダがまじめな顔をしていった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「まずは、この場所、世界のことについて説明いたしましょう。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　ここはあなたたちが住んでいた世界とはおそらく異なり、&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　歴史、地理、経済などいろいろと違うところもあるかもしれません。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　ですが、落ち着いて最後まで話を聞いてもらえると光栄です」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そういってユダはつくえの上に置いてあったコーヒーを口に運んだ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「まずは昔話からしましょうか。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　この地に伝わる昔話なんで正確かどうかはわかりませんがね。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　昔々、この地には精霊と人間が住んでいた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　精霊と人間はともに助けあいながら生活していた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　精霊は人間に魔法を授け、人間は精霊に生きる技術を授けた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　お互い、何の隔たりもなく平和に暮らしていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　そのころの人間の平均の寿命は、男女ともに４０歳だったといわれている。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　人間の一部がその寿命を延ばすことができないかと研究を重ねていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　研究の途中、人間たちはあることに気がついた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　精霊には寿命がない。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　そう、精霊が死んだなどということは一回も聞いたことがなかったのでした。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　そして人間は一匹の精霊に問い詰めました。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　どうして、そんなに長く生きることができるのかと&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　精霊は答えませんでした。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　人間たちはいつしか精霊たちに不信感を抱くようになりました。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　そして、いつしか人間と精霊は決別して生活するようになりました。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　精霊の魔法が使えなくなった人間たちは、自分たちの技術を使い&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　魔法のような道具、魔道具を作り上げることに成功しました」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そういうとユダは自分のポケットの中から懐中電灯らしきものを取り出しました。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「これが魔道具です。このボタンを押すと、光が出る仕組みになっています」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;これってただの懐中電灯じゃないか？真人は思った。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「そして、魔道具を作ることに成功した人間は魔道具の開発を進めました。&lt;br /&gt;
　&lt;br /&gt;
　そして魔道具の開発に伴って、新事実が発覚したのです。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　人間が魔法を使わなくなって５年後。人間の平均寿命は大幅に増え、８０歳にもなっていました。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　それは人間たちにとっては喜ばしいことでした。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　しかし、なぜ魔法を使わなくなったら寿命が長くなったのかは今の技術でも&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　わかりません。その答えは精霊たちしか知らないというわけです」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;またユダがコーヒーを口に運んだ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人は長い話のせいで、頭の中がパニック状態に陥ってしまっていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「わかっていただけたでしょうか&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　次にこの場所、魔法都市コロニスについてお話しいたしましょう。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　魔法都市コロニスは魔法のような道具、魔道具の製作が盛んな都市として有名です。&lt;br /&gt;
　&lt;br /&gt;
　なので、魔法のような都市ということで魔法都市と呼ばれています。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　ここで作られた魔道具は大陸全土へと出荷しています。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　生活用品、武器などなどいろいろな種類の魔道具があります。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　さいきんでは魔道具を使った魔道具戦争などが問題になっており、&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　こちらも苦戦を強いられています。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　この大陸には、いろいろな街、村、都市がありそれぞれが多様な特色を持っています。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　まだ、未発見の土地や独立している村などがあります。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　そういう村などが戦争を起こすのです。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　まったくこまったもんです。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　今、全力で魔法都市はそういう村をなくそうと土地開発を進めているところです」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そしてユダはまたコーヒーを口に運んだ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;このハロハロ野郎はいったい何回コーヒーを飲むんだ？&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人はパニック状態に陥っている頭の中で必死に考えていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;つか、おれたちが帰る方法はどこにあるんだよ。ちょっとだけ真人はユダに不信感を抱いていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「さて、ここからがあなたたちが元の世界へと帰るための大切な話です」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;前置きがなげぇよ&amp;hellip;。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「この世界には人間と決別した精霊が潜んでいます。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　どこにいるのかはわかりません。ですが、現に魔法を使う人間が多発してきています。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　精霊たちなら何かを知っているのかもしれません。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　それじゃなくてもまだ方法はあります。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　この大陸には大きな図書館があり、そこの中にはかなりの数の本があります。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　その中に、あなたたちが元の世界へと帰る手掛かりとなるものがあるかもしれません。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　どっちを選ぶかはあなたたちにお任せします」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そう言われ、２人はお互いの顔を見合わせた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;帰る方法になりそうなものはあった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そうするしか、帰れそうになさそうだ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;俺は、図書館に行って無難に本を探したほうがよさそうだと思った。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「精霊を探しに行きましょう」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;早月が静かに言った。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「でも、どこにいるかわからないんだぞ精霊なんて&amp;hellip;」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人はその意見に反論する。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「じゃぁ図書館に行って、地道に探すっていうの？」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「あぁ」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;２人はまた喧嘩になりそうな体制になった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;それを見ていたユダは２人の間に入った。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「２人とも落ち着いてください。さきほどあなたたちに任せるといいましたが、&lt;br /&gt;
　&lt;br /&gt;
　私的には図書館のほうをお勧めいたします。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　図書館には魔道具の検索機もありますし、そんなに時間もかからないと思います。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　ですが、精霊を探すとなると魔法を使っている人たちに聞き込みをしなければなりません。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　それはとっても危険なことです。ですから図書館のほうをお勧めします」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そこまで言い終えると、２人は落ち着きを取り戻していた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「わかったわよ、じゃぁ図書館へと行きましょう」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;どうやら早月も折れたみたいだ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「真人さんもよろしいですね」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「ハイ」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;急に振られたんでちょっとびっくりした。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;それでも、図書館へと行くことになってよかった。命は大切にしなきゃ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「それではあなたたちに渡しておきたいものがあります」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そういうと、ユダは右手の指を鳴らした。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;すると、またロボットの＜ｗ５＞が出てきた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;今度はコーヒーではなくて、別のものを手に持っている。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;それをユダがとると、ｗ５はさっきと同じように戻って行った。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「これです」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そういって、さっきユダがｗ５からとったものを２人に差し出した。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;それは日本刀のような形をしたものと昔のゲームの主人公が使ってそうな剣と&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;なにやら凄そうな腕輪２個だった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「それぞれお選びください。剣１つ、腕輪１つです」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;俺は昔のゲームの主人公が使ってそうな剣をとった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「その剣はただの剣なんですが、その腕輪がわが社が開発したオートバトルモードを&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　搭載しておりまして、もし戦闘に出くわすことになったとき&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　そのスイッチを押してもらい、剣を相手の体のどこかに切りつけると&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　切りつけたかたを敵とみなし、相手を戦闘不能にするというわが社の魔道具です」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;へぇー、そうなんだ。と感心しながら真人は右手に腕輪をつけた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「ちなみに補足ですが、早月さんのが最新型で真人さんのが１つ古いモデルとなっております」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「え、なんで？」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「実は、最新型のほうの在庫がなくてすいませんでした」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;ユダが深く頭を下げる。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「やったねーだ」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;早月がちょっと調子に乗っている。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;今すぐ、この腕輪のスイッチを入れて切りかかりたいところだった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「あと、この大陸の地図です」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;いつの間に地図を取り出していたのか、さっきまで頭下げていたはずなのにと思ったが&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人は地図を受け取った。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;地図というより、電子地図と言ったほうが正確かもしれない。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「ここが、この場所コロニスなんでここに行けば図書館があります」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;ユダは地図の上で指を差しながら説明した。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「そこの地名は、イヴリンです」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「そして、今日はこのコロニスでゆっくりとして行ってください。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　もちろん今度は地下牢ではなくてホテルで&amp;hellip;」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そういって、ユダは深く頭を下げ部屋の奥へとはいって行った。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;すると、後ろのエレベーターからまたあの男たちが来て、２人を連れていった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;２人はホテルの一室に案内された。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;同じ部屋というのがなんだか気に食わなかった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;それでも、食べ物はとてもおいしかったので、そこらへんは勘弁しといてやろう&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;と真人は、心の中で勝手にそう思っていた。&lt;/p&gt;</description> 
      <link>http://kiakata0409.blog.shinobi.jp/%E7%AC%AC%E4%B8%80%E7%AB%A0/%EF%BC%93%EF%BC%8E%E3%82%B3%E3%83%AD%E3%83%8B%E3%82%B9%EF%BD%9E%E9%AD%94%E6%B3%95%E9%83%BD%E5%B8%82%EF%BD%9E</link> 
    </item>
    <item>
      <title>２．ディスカーレッジ～落胆～</title>
      <description>&lt;p&gt;２人が閉じ込められていた牢屋から出て階段を上がるとそこはまるで未来都市のような&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;空間が広がっていた。テレビや漫画でしか見たことのない光景を目の当たりにして&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;２人は思わず顔を向き合わせてしまった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;目が点のようになってら。マンガ女め。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;思わず早月の顔を見て笑ってしまった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;しかし、早月もなんだか上から見下すような眼になりこっちを見て冷笑している。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;ちょっと怖くなった真人は笑うのをやめ、歩いている方向へと視線を変えた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;さっきは暗くてよくはわからなかったけど俺たちをひきつれている男の人たちの服装は&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;この今いる空間とよくマッチしている。でもちょっときつそう&amp;hellip;。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人はまた微かな笑みを浮かべてしまった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「おい、何笑ってんだ」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;男たちの中のおれの隣を歩いている人が気づいたらしく険しい顔して言ってきた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「い、いえなんでもないです」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人はあわてて言い返した。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;さすがにあなたたちの服装がおかしくて笑ってしまいましたなんて言えないからな。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そして、忘れていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;俺たちは今、俺たちが住んでいた場所とは違う場所に来ているということに&amp;hellip;。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そう思うとなんだか笑ってもいられなくなってきた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人はうつむきながら、耳に入ってくるいろんな音を聞きながら男たちの&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;引き連れていくところへとすんなり歩いて行った。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;&lt;br /&gt;
やがて、しばらく歩くと耳に入ってきていたいろんな音が聞こえなくなってきていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;異変に気づき真人は傾いていた頭を持ち上げると目の前には&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;俺たちがいた世界でいう高層ビルみたいな建物が建っていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;まぁこんな未来都市みたいな場所なんだからこんな建物あってもおかしくないよな&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そう思い、真人は男たちに引き連れられてその建物に入って行った。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;建物の中はとても静かでおちつきのある色合いが施してあった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;目の前には大きな扉があり、おそらくエレベーターらしきものだろうと思った。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そのなかに男たちは真人と早月を入れ、２人の腕に何かをした。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;すると、なぜか再びまた腕が動くようになった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;その事実に驚いていると扉が閉まり、２人は再び閉じ込められた感じになった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;２人はそれから何も話さなかった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人はこれからどうなるのか、それだけが不安だった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;一体何でこんなことになったんだろうか。さっきまで笑っていた自分の気がしれない。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人は床にしゃがみこんだ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;ふと、真人は早月のほうを見てみた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;早月もきっと、同じようなことを考えているのだろう。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;なんだかさっきとはまるで別人のような思いつめた顔をしている。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;すると、急に２人が入っていた小さな部屋が動き出した。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;揺れてはいるが、上下左右どの方向に動いているのかはわからなかった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;しばらくすると揺れがおさまった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;これからどうなるのか、小さな部屋は緊張感で包まれていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そしてその緊張感の中、２人の目の前にあった扉はゆっくりと&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;開いていった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;２人には少しずつ見えてくる扉の向こう側が&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;とても明るい未来には見えなかった。きっと扉が開くとナイフやレーザーやらが飛んでくるのだろう&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そしてすこしずつ開いていた扉はその向こう側をあらわにして動きを止めた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人は目をつむり、すべてをあきらめた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「ハロー」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;なんだかとても空気の読めてない声がする。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「ハローハローハロー」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;リズムに乗ってきやがった。なんかいらつく。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「ハローハローハローウィン」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「ハローハローうるせんだよ」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;聞こえてくる聞いたことのある声に賛同し、心の中でうなずく。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「だいたい、空気読めてなさすぎだろ。なんだその格好は」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そうだそうだ言ってやれ。その格好ってそんなにひどい格好しているのか。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;見たい。いや、しかし待てここで出て行ってもおれの出る幕はなさそうだ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「だいたいなんだハローウィンってよ」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;あぁそうだそうだ。ん、でもたしかハローウィンじゃなくてハロウィンだよな&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;ちょっと間違ってますよあなたたち。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「もっとハロー―ウィンって伸ばせよ」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;いや、だから間違ってるってどっちか気づけよ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「いや、なんか違った気がするな」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そうだ、違うんだ。気づいてくれ本当はハロウィンなんだ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「そうだ、ハッロウィーンだった」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;違う、違う、違う。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「ハロウィンだ」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;思わず激しい突っ込こみをしてしまった。そして目を開けた俺の視界に映ったものは&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;おそらくさっきのうざい声の主の変な格好をした男を早月が締め上げているところだった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;&amp;nbsp;&lt;/p&gt;</description> 
      <link>http://kiakata0409.blog.shinobi.jp/%E7%AC%AC%E4%B8%80%E7%AB%A0/%EF%BC%92%EF%BC%8E%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%B9%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%83%AC%E3%83%83%E3%82%B8%EF%BD%9E%E8%90%BD%E8%83%86%EF%BD%9E</link> 
    </item>
    <item>
      <title>１．トランスミッション～転送～</title>
      <description>&lt;p&gt;さきほど失恋回数十回目を無事に終えた真人は公園のベンチで一人たそがれていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;無邪気に遊ぶ子供たちの姿が目に入り、じっと眺めていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;はぁ&amp;hellip;。俺ってどうして毎回こうなるんだろう。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そう、真人の毎回ふられる原因は親父の血を受け継いだせいなのか&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;発症する自称「光男ブレッドフォーム」のせいだと思う。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;光男は真人の父親の名前だ。母親がいたころはあんなではなかったのだが&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;数年前、母親がゆずと俺を置いて出て行ったっきり親父は&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;あぁなってしまった。きっとおれたち兄妹がさびしくならないようにと&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;気を使っているのだろうが最近そうも思えなくなってきた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;なんだか親父自身がとっても楽しそうにしているから&amp;hellip;。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そんなことを思いながら腕時計に目をやった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;１１時３０分。もうこんな時間かぁ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;その時、真人の前に一つのボールが転がってきた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;それを拾い上げて立ち上がると目の前に一人の少年が立っていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;何歳ぐらいだろうか、ゆずと同じぐらいかなぁ真人が手に取ったボールをじっと見つめている。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人は少年がボールを返してほしいのだと察し、ボールを少年に差し出した。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「ありがとう」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;すると、後ろに大きな影が見えた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「すいません、ありがとうございます」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;きっとその少年の母親だろう。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;少年の母親は少年の手をつかみ公園の外へと出て行った。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;母親か&amp;hellip;。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;どんな顔してるんだろう。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;おれの母親&amp;hellip;。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;&lt;br /&gt;
「あったよ。あった。だいぶ古い本みたいなんだけど&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　もうすぐ処分されるんだ。きっと読んだことないから特別に今日だけ&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　貸してあげる」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;係りの人がようやく戻ってきた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;かなり待ったと思う&amp;hellip;。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;係りの人は新にほこりを少しかぶった本を差し出した。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「ありがとうございます」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そういって、会釈して新はお気に入りの席へと戻って行った。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;相変わらず、つめたそうな風は外の植木をいじめていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そんなことより早く本を読もう。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;と、新は本を開いた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;その瞬間新はさっきまでの図書館の暖房のきいた温かい空気が&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;一変して、外のとても冷たい空気に変わったのがわかった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;新は本に向けていた視線を周りに投げてみた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「ここは&amp;hellip;どこだ---」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;&lt;br /&gt;
母親&amp;hellip;。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人の頭の中はいまや母親のことで頭がいっぱいになった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;さっきふられたことも忘れて幼少期のころの記憶を必死に引き出そうといる。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;いまや、もう周りの子供たちの声も聞こえなくなってきていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;とうとう、真人は四つん這いになってしまった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;目をつむり必死に思い出す。だけどやっぱり&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「あぁ～わかんねぇー」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「何がわからないのよ」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;さっきまで何も聞こえていなかった耳に誰かの声がはいってきた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;少しの間、静寂が訪れた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「だから、何が分かんないのかってきいてるでしょ、つかどけなさいよ」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;この声は空耳ではない。そう思った。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;なので、真人はつむっていた瞼をゆっくりと開けてみた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;すると、四つん這いになっていた真人の体の下にさっきの声の&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;主らしき目をくりくりさせたショートカットの少女がいた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;その少女と目が合った。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;一秒後、真人は顔じゅうが熱くなった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;二秒後、真人の体は少しの間宙を舞った。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;三秒後、真人は堅くて冷たい床らしき場所に鼻血を垂らしながら寝ころんだ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;どうなってんだ&amp;hellip;。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人はぽかんとしていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;こんなシーンなんてマンガでしか見たことがない。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;しかも、さっきまで空があった場所には黒ずんだ冷たい感じの天井が居座っていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「どうなってんだ&amp;hellip;」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人の口はそういうしかできなかった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「どうなってんだ。はこっちのセリフなんですけど」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;さっきと同じ感じの声がまた聞こえた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「いったいどうやったらあの場所からこんな寒い牢獄みたいな場所に着くのよ！」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;牢獄？たしかにそう言われてみると牢獄みたいだ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;よくみると壁も天井と同じような感じだ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;この場所にあるのは、一枚の毛布と一人の漫画に出てきそうな少女だけ&amp;hellip;。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;一通りあたりを見回してから改めて出た言葉は&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「夢か。なんだ夢なんだな」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人のさっきまでの表情が柔らかくなってきた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「夢なわけないでしょ、ちょっと強くぶちすぎた？」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;一瞬で希望は断たれた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「じゃぁなんだっていうんだよ漫画少女」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人は立ち上がり、どなりつけた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「漫画少女ってなによ。私にはちゃんと早月っていう名前があるのよ変態」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;早月は立ち上がって真人に対抗した。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「変態だと、もとをただせばお前がいきなりそんな場所に現れるのがいけないんだろうが」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「現れたのはあなたのほうでしょ変態」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「また変態っていった。俺には真人っていうすばらしい名前があるんだよ」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「あーらすばらしい名前だことあたしの名前にはかなわないけどね」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「なんだとぉ」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「やんのかぁ」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;がんのつけあいをし始めた。と、そのとき唯一壁のほぼ天井に近い場所にある窓らしき場所から&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;声が聞こえた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「おい、何をやってるんだうるさいぞ」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;二人はいったんけんかはやめ、窓らしき場所から聞こえてくる声に耳を傾けた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「ふぅ&amp;hellip;ようやくおさまったか、今からお前らをここからだす&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　変なまねはするなよ抵抗したら殺せとの命令だからな」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そういうと、窓らしき場所から床までが一瞬で横に開き多くの光が差し込んできた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そこから大人だと思われる人が数人出てきた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;その光景を見て真人は自分のほっぺたをつねってみた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;変わらない&amp;hellip;。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;なんだ、やっぱり夢じゃないのか。どうなってるんだ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人は少し考えてみたが、まったく答えは出なかった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そうこうしているうちに手を後ろにまわされた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;あのマンガ女もおんなじようにやらされているいい気味だ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;というよりこの人なにしてんだ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;普通ここはロープとか手錠とかで腕固定するんじゃないのか？&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人の後ろにいる男はロープでも手錠でもない何か別のものを持っている&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;よく見ることができない。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「おい、前を向いていろ」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「は、はい」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;急に言われたので真人の声は恐怖を感じさせるような声だった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;すばやく前を向き、後ろで起こっていることの想像をふくらましていった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そんなことをしている間、というより一瞬で後ろの男は真人の視界に入ってきた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;腕は&amp;hellip;。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そう思い、真人は腕を動かそうと試してみた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;だけど何をされたのかもわからないが、とにかく腕は動かなかった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;縛られている感覚もない。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「ほら、行くぞ」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そう男に言われ、真人は早月と一緒に男たちに連れて行かれた。&lt;br /&gt;
&amp;nbsp;&lt;/p&gt;</description> 
      <link>http://kiakata0409.blog.shinobi.jp/%E7%AC%AC%E4%B8%80%E7%AB%A0/%EF%BC%91%EF%BC%8E%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%83%9F%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3%EF%BD%9E%E8%BB%A2%E9%80%81%EF%BD%9E</link> 
    </item>
    <item>
      <title>～プロローグ～</title>
      <description>&lt;p&gt;目の前がかすみ始めた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;手や体中の感覚さえもあの男に奪われていくようだ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;それでも&amp;hellip;。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;少年はぼろぼろになりながらも自分の体を無理やり起き上がらせる。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「まだ立つのか」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「何度でも立ち上がってやる。それがあいつとの約束だ」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;少年の右手には炎の灯った剣が握られていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;少年が息をするたびに一緒に大きく揺れる。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「ふふふ、ご苦労だな。あの女はお前を裏切ったんだぞ」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「関係ない&amp;hellip;」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;強い風が砂埃を立てながら目の前を通って行く。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;もうすでに少年の体は一つのたわいもない少女との会話での約束だけで動かされている。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;体がぼろぼろでも少年の瞳は輝きを放っていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「そんなの関係ない。裏切られても、蹴落とされても、殴られても、切りつけられても&amp;hellip;　&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
俺があいつを好きだってことにまったくもって差し支えねぇんだよ！」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;男は少し鼻で笑い、目の前でぼろぼろになっている少年へといった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「なら結果を出せ！全力で来い。少年！」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そういうと男は素早く腰にぶら下げていた大きな剣をさやから抜き出した。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;少年は右手の剣の今一度強く握りしめた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;一瞬二人の動きが止まり、次の瞬間２人は目の前の敵に最後の一撃をたたきつける。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;辺りの砂埃が一層強くなりその場を包み込んだ。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
「真人、もし願いがかなうとしたらどんなことをお願いする？」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「うーんとねぇ、ぼくは&amp;hellip;。ひーろーになりたいな」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「ヒーローか、いいなぁ。真人はなんでヒーローになりたいんだい？」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「え？だってさぁ、おじぃちゃんとかおかぁさんとかおとうさんとかみんなが&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　もしかいじゅうにおそわれたときにさぁ、ぼくがみんなをまもれるじゃん！」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;幼いころのおれはそんなことをいいながらガッツポーズを決めていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「真人は守るなんて言葉ももう覚えたのかい？すごいねぇ」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「だって、このまえのぎゃおれんじゃーのぎゃおれっどがみんなをまもる！っていってたもん」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「そうかぁ&amp;hellip;。じゃぁ真人が大きくなったときはヒーローになってるといいね」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「うん、ぜったいになるよおじぃちゃん」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「じゃぁ約束だよ」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そういっておじぃちゃんはおれの小指を自分の小指を絡ませてリズムに乗りながら&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;笑顔でおれの手を引いた。それは単なる幼少期の祖父との約束だったかもしれない。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;だけど、祖父の小指には孫への愛情より他に何かがこもっていた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
それは気のせいだったかもしれない。でも幼い日の自分はそう思った。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;笑顔で手を取り合って夕方の帰り道で大きな声で歌った。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「ゆびきりげんまん、うそついたらはりせんぼんのーます。ゆびきった」&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;strong&gt;＝幸せの契約＝&lt;/strong&gt;&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
ある冬の日の深夜、雪が降り積もる中、早月（さつき）は自分の家の近くの自販機へと向かっていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;なんでこんな目に会わなきゃいけないんだか&amp;hellip;。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;あのくそ兄貴、覚えてろよ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;冬休みだからって、こき使いやがって。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;頼まれた炭酸のジュース、家に着くまで振りながら帰ってやるんだから。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;だいたい、今時冬なのに炭酸飲むなんて、季節はずれもいいところだよ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;お目当ての自販機で兄に頼まれたジュースを手に取った早月は、&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;兄の驚く顔を思い浮かべ、思わずにやけてしまった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;よし、家に帰るか。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そう思い振り返った瞬間、誰かとぶつかった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「痛い」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;ぶつかった相手は思いのほか、がっちりとした体格だったので&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;けっこう痛く、思わず声が出た。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「すいません」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;一応謝っておく、変な不良だったら困るから。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「いえいえ、こちらこそすいません。ちょっとよそ見をしていたもんで」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そう言いながら、男は倒れた早月に手を差し伸べた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;なんだ結構いい人じゃん。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;感心しつつ、早月は差し伸ばされた手をつかみ起き上った。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「ありがとうございます」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;早月は、一礼をして家への帰路へと向かった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;さっきよりも、降っている雪の量が増えてきている。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;急いで帰らなきゃ、風邪ひいちゃう。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そう思い、早月は急ぎ足で家へと向かった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;雪がどんどんひどくなってきた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;風も強くなり、視界が暗闇と雪で阻まれてほとんど見えない状態になってしまった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;こんなになるなんて聞いてないよぉ&amp;hellip;。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;早月は文句を言いながらとりあえず家へと向かっていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;しかし、もう家についてもいいころなのにいっこうに家に着かない。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;自販機から家まではそう遠くはないはず、歩いて五分もかからない。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;それどころか、雪のせいだと思うが周りの家さえもなんだか見えなくなってきている。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;不安に駆られながらも早月はひたすら歩いていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;ここは街中なんだから遭難なんてそんなことあるはず&amp;hellip;。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;と、改めて前の暗闇をにらみつけたそのとき&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;早月は目の前に映し出されたあまりの光景に驚き、右手に持っていたジュースの缶を落としてしまった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;ジュースの缶は手のひらから滑り落ち、泡を噴き出していた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;&amp;nbsp;&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;『昨夜、都内の女子中学生が行方不明になったとの通報がありました。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　警察は今その女子中学生を捜索中ですが、未だに見つからず&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;　警察は拉致の可能性がないか、捜索と同時に捜査中です&amp;hellip;』&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;&lt;br /&gt;
「真人、お前も気をつけろよ。最近夜抜け出してるの知ってるんだぞ」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;親父の説教が始まった。いつものことだ、見たものをそのまま口に出してくる。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「はいはい、わかってる」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「にぃちゃん、夜遊びに行ってるの？にぃちゃんずるい」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;妹のゆずが駄々をこね始めた。ゆずはまだ五歳、いろんなことに興味があるのはいいことだけど、&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;あまりにもいろんなことに興味を持ちすぎている。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「はいはい、今度一緒に遊びに行こうね」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「おい、ゆずまで連れてほんとに何をする気だ。ゆずを連れていくんならとぉさんも連れて行きなさい」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;何を言ってるんだこのバカ親父は&amp;hellip;。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「はいはい、今度ね」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「やったな、ゆず」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;親父は、ゆずと目を合わしてガッツポーズを決めている。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;ゆずもそれに反応してガッツポーズを返す。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;どうなってんだよ、この家族。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人（まこと）は、微笑を浮かべて最後のパンを食べきった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そろっと勉強しなきゃまずいよな。いつも、そう思ってるんだが&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;つい、コートを手に外に飛び出してしまう。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人は中学校三年生、三月には受験を控えている。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;外に出てみるとさっきまでの温かさとは裏腹に自分の顔面に&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;勉強しろと訴えるかのように冷たい風が吹いた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人は二階建てのアパートに住んでいる。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;この建物もかなり古くなり、今にも床が抜けそうな感じだ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;最近冷え込みが激しくなり夜の外出さえも厳しくなってきた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;弱音をはいてるわけにはいかない、今日は待ちに待った初デートの日。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;気を取り直し、待ち合わせ場所へと急いだ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;待ち合わせ場所は近所の公園だった。昼間は近所の子供たちが遊びにきていてとっても&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;にぎやかな場所だ。その公園の真ん中にある時計の下で九時に待ち合わせる予定だった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;が、さっき携帯の時計を見たら八時五十分。どうやら家の時計が一時間遅れていたみたいだった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;初デートなんで気持ちを落ち着かせることもあり、&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;一時間前には公園にはついていようと思っていたんだけど&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;こうなるとは&amp;hellip;。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そういえば、昨日の夜親父がゆずと時計回しごっこで盛り上がってるのを風呂上りに&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;見た覚えがある。時計回しごっことはその名の通り時計を回して遊ぶ。という&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;いたってシンプルな我が家の四大ごっこのうちの一つだ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;ご先祖さまからのありがたい教えだとかで、このまえちょっとばかにしたら&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;とっても怒られた記憶がある。きっとその時計回しごっこのさい、時計を直すとき&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;一時間間違えて遅く設定してしまったんだろう。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人は頭を抱えつつもバスの時刻表を見た。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;次のバスは、九時。待つよりも走ったほうが早い。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;初デートの日に遅刻なんてそんな悲しいことはしたくはない。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人は急いで公園へと向かった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;公園まではここらへんから大体二十分。走れば間に合うはず。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;よし、この道を曲がれば公園に出るはず&amp;hellip;。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人の前に障害物が立ちはだかった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人は走る足を止め、目の前に立っているよく見る障害物に目を通した。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;【工事中につきこの先立入禁止】&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;ありえない&amp;hellip;。息切れしながら真人はポケットから携帯を取り出した。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;携帯の画面の右上に映っている時刻を眺めた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;【８：５５】&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;終わった&amp;hellip;。この道がなければここからだいぶ戻って違う道へと行かなければ&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;公園にはたどり着くことができない&amp;hellip;。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人は地面に四つん這いになった。障害物の奥の工事の人が真人を不思議そうに見ている。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;アスファルトのでこぼこが手のひらとひざを刺激した。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;目の前を猫が横切った。猫は馬鹿にしたような目でこっちを向きながら塀に登った。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;塀&amp;hellip;？塀。塀！真人の頭にいい考えが浮かんだ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;だが、こんな発想いまどき幼稚園児ぐらいしかやらないだろう。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;さすがは親父の息子。親父、お前の息子でホントに良かったぜ！&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人は改めて携帯の時刻の画面を見た。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;【８：５７】&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;間に合う。真人は、さっきの猫が登った塀に手をかけ、いっきにのぼった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;休憩して座ってたばこを吸っていた工事の人はたばこを吸うことを忘れ、&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;塀に登った少年の姿を口をあけたまま見ていた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人は、塀の上を走りだした。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;それに反応してさっきの猫が真人から逃げていく。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;残り二分。細い塀の上を両腕を開きバランスをとりながら走っていくその姿は&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;まさに鳥。風をきり塀の上を公園へと向かって走っていく。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;残り一分。もう、公園が見えてきた。あそこにいるのは唯ちゃん。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;いつもよりも大きく開いた目、さらさらの短い髪は風になびき、&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;周りにいる子どもたち、保護者の方々の中で輝いているように見える錯覚を覚えさせる&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そのきれいな肌。まるで雪みたいだ。待っててくれたんだね。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;今すぐ行くよ。真人は塀から飛び降りて、唯のほうへと飛びかかった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;だが、ひらりとかわされ真人はあっけなく地面に顔面をたたきつけた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「なにすんのよ」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;なんだかとっても嫌な予感がする。またやってしまったと思い&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;真人は恐る恐る体を九十度回転させて唯の顔を見た。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「なんか冷めた。真人くんがあんなに恥ずかしいことするなんて思わなかった。じゃぁね」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そういうと、唯はすたすたと公園から出て行ってしまった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;鳥の羽ははかなくも散ってしまった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;&amp;nbsp;&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;十時二十六分。もうこんな時間かぁ&amp;hellip;。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;あれから何分待っただろう。友達がトイレから帰ってこない。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;新（しん）は食べ終わったみんなの皿眺めた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;みんな全部食べ終わっている。そして、三十分待っても誰一人として帰ってこない。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;新の脳内の回路が盛んに働き始めた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そして一つの結論を出した。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;やられた&amp;hellip;。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;最初ここに来る時もなんだか嫌な予感がしていたけれど本当にこうなるとは、&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;どうりでみんなやけに今日は高いものを注文すると思った。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;まぁ仕方がないか、いつものことだし。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そう思い、新は席から立ち上がった。カウンターへ行き金を払い、&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;外の冷たい空気にあたりに行った。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;何度めだろう。新は過去の記憶をよみがえらせた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;たしか、最初にやられた時は中学一年の時初めてみんなと一緒に&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;このファミレスに来た時だった。たしか、あの時もみんなトイレに行ったっきり&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;帰ってこなかった。あのファミレスは出入り口が二つあって店の正面に大きな出入り口が一つと&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;トイレの近くにもうひとつある。きっとそこから逃げ出したんだろう。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;あれから何回やられたことか&amp;hellip;。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;でもどうせ金なんてあっても使い道ないし、人のために使ったんならそれでいいじゃないか。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そんなこと思ってる自分を情けなく思いため息をついた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そしていつもここへくる。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;いやなこの世界から一時でも離れることができる場所。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;国立の立派な図書館。昔からあってよくここへくる。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;係りの人とはもう仲良しだ。新は高鳴る胸を押さえながら図書館へとはいって行った。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;中へ入るといつもと変わらぬ空気が漂っていた。本の匂い&amp;hellip;。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;この匂いは嫌いではなかった。いや、むしろ好きだった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;入口の扉をしめ、奥へと進みカウンターの係りの人にあいさつをした。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「やぁ、また来たのかい」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「はい」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;係りの人の笑顔の問いかけに新も笑顔で返事をする。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「ごゆっくり」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そういわれ、新は一礼して図書館の奥へと進んでいった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;図書館の中はさすが国立ともいうべきか、とてもきれいだ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;本もきちんと整っていて、床もきれいなフローリングだ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;窓もたくさんあり外からの光がはいってくる。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;理想的な空間。何度かこの場所にすみつきたいとも思ったことがある。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;ついた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;新は窓際の図書館の一番すみっこの場所がお気に入りだった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;いつもこの席で違う世界を堪能している。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;新はさっそく荷物を置き、ジャンバーを椅子にかけて本を探しに行った。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;席の近くの本はすべて読みつくしてしまっているので少し遠いところまで行かなければならない。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;図書館は広いのでまだまだ読んだことのない本はたくさんあった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;だけどなぜか今日は読みたい本が見つからない。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;いつもは、しばらく歩いていると背表紙のタイトルで読む本を決めているけど&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;今回はなんだか興味がわかない。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;どうしたんだろう。新は少し不安になった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;読む本がなかったら、違う世界へと行くことはできない。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;この世界にずっといなければいけない。そんなの嫌だ。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;新はあせった。仕方がないので、カウンターにいる係りの人に&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;お勧めの本を教えてもらうことにした。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;こういうことをするのは初めてだったので少し気が引けたが&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;読む本がないのだから仕方がない。新はカウンターへと足を進めた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「あのぉ、すいません」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;新に気づいたらしく係りの人はカウンターの奥から笑顔を見せた。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「どうしたの？」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「実は、読む本が決まらなくて何かいい本ありますか？」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;新は少し照れながら言った。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;「いい本ねぇ&amp;hellip;ちょっと待ってて」&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;そういうと係りの人はカウンターの奥へと行ってしまった。&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;&amp;nbsp;&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;&amp;nbsp;&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;&lt;strong&gt;コメントよろしくお願いします！&lt;/strong&gt;&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;&lt;br /&gt;
&amp;nbsp;&lt;/p&gt;</description> 
      <link>http://kiakata0409.blog.shinobi.jp/%EF%BD%9E%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%82%B0%EF%BD%9E/%EF%BD%9E%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%82%B0%EF%BD%9E</link> 
    </item>
    <item>
      <title>＜目次＞</title>
      <description>&lt;p style=&quot;text-align: center&quot;&gt;&lt;strong&gt;＝幸せの契約＝&lt;br /&gt;
#%D:5%#＜目次＞&lt;/strong&gt;&lt;strong&gt;#%D:5%#&lt;br /&gt;
&lt;/strong&gt;&lt;/p&gt;
&lt;hr /&gt;
&lt;p style=&quot;text-align: center&quot;&gt;０．プロローグ#%E:316%#　&lt;a id=&quot;プロローグ&quot; href=&quot;http://kiakata0409.blog.shinobi.jp/Entry/2/&quot;&gt;kiakata0409.blog.shinobi.jp/Entry/2/&lt;/a&gt;&lt;br /&gt;
&amp;nbsp;&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;&lt;strong&gt;　　　―第一章―&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　１．トランスミッション～転送～#%E:578%#&amp;nbsp; 　　&amp;nbsp;&amp;nbsp;&amp;nbsp;&amp;nbsp; &lt;a href=&quot;http://kiakata0409.blog.shinobi.jp/Category/3/&quot;&gt;kiakata0409.blog.shinobi.jp/Category/3/&lt;/a&gt;&lt;br /&gt;
&lt;/strong&gt;&lt;br type=&quot;_moz&quot; /&gt;
　&lt;strong&gt;２．ディスカーレッジ～落胆～#%E:195%#　　　&amp;nbsp;&amp;nbsp;&amp;nbsp;&amp;nbsp; &lt;a href=&quot;http://kiakata0409.blog.shinobi.jp/Category/3/2/&quot;&gt;kiakata0409.blog.shinobi.jp/Category/3/2/&lt;/a&gt;&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　３．コロニス～魔法都市～#%E:675%#&amp;nbsp;&amp;nbsp;&amp;nbsp;&amp;nbsp;&amp;nbsp;&amp;nbsp;&amp;nbsp;&amp;nbsp;&amp;nbsp;&amp;nbsp;&amp;nbsp;　&amp;nbsp;&amp;nbsp;&amp;nbsp;&amp;nbsp;&amp;nbsp; &lt;a href=&quot;http://kiakata0409.blog.shinobi.jp/Entry/5/&quot;&gt;kiakata0409.blog.shinobi.jp/Entry/5/&lt;/a&gt;&lt;br /&gt;
　&lt;br /&gt;
　４．ダークネスオブナイト～夜陰～#%E:688%#　&amp;nbsp; &lt;a href=&quot;http://kiakata0409.blog.shinobi.jp/Entry/6/&quot;&gt;kiakata0409.blog.shinobi.jp/Entry/6/&lt;/a&gt;&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　５．リカバリー～再起～#%E:146%#&amp;nbsp;&amp;nbsp;&amp;nbsp;&amp;nbsp;&amp;nbsp;&amp;nbsp;&amp;nbsp;&amp;nbsp;&amp;nbsp;&amp;nbsp;&amp;nbsp;&amp;nbsp;&amp;nbsp;&amp;nbsp;&amp;nbsp;&amp;nbsp;&amp;nbsp;&amp;nbsp;&amp;nbsp;&amp;nbsp;&amp;nbsp;&amp;nbsp;&amp;nbsp; &lt;a href=&quot;http://kiakata0409.blog.shinobi.jp/Entry/7/&quot;&gt;kiakata0409.blog.shinobi.jp/Entry/7/&lt;/a&gt;&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　６．アンダーグラウンド～地中～#%E:313%#&amp;nbsp;&amp;nbsp;&amp;nbsp;&amp;nbsp;&amp;nbsp;&amp;nbsp;&amp;nbsp; &lt;a href=&quot;http://kiakata0409.blog.shinobi.jp/Entry/8/&quot;&gt;kiakata0409.blog.shinobi.jp/Entry/8/&lt;/a&gt;&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　７．マジシャン～奇術師～#%E:178%#&amp;nbsp;&amp;nbsp;&amp;nbsp;&amp;nbsp;&amp;nbsp;&amp;nbsp;&amp;nbsp;&amp;nbsp;&amp;nbsp;&amp;nbsp;&amp;nbsp;&amp;nbsp;&amp;nbsp;&amp;nbsp;&amp;nbsp;&amp;nbsp; &amp;nbsp; &lt;a href=&quot;http://kiakata0409.blog.shinobi.jp/Entry/9/&quot;&gt;kiakata0409.blog.shinobi.jp/Entry/9/&lt;/a&gt;　&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　８．ユグドラシル～世界樹～　　　　　　 &lt;a href=&quot;http://kiakata0409.blog.shinobi.jp/Entry/10/&quot;&gt;kiakata0409.blog.shinobi.jp/Entry/10/&lt;/a&gt;　　　　　　&amp;nbsp;&amp;nbsp; &lt;/strong&gt;&lt;/p&gt;
&lt;p style=&quot;text-align: center&quot;&gt;&lt;br /&gt;
&amp;nbsp;&lt;/p&gt;
&lt;p style=&quot;text-align: center&quot;&gt;&lt;br /&gt;
&amp;nbsp;&lt;/p&gt;
&lt;p&gt;&amp;nbsp;&lt;/p&gt;</description> 
      <link>http://kiakata0409.blog.shinobi.jp/%EF%BC%9C%E7%9B%AE%E6%AC%A1%EF%BC%9E/%EF%BC%9C%E7%9B%AE%E6%AC%A1%EF%BC%9E</link> 
    </item>

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