[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
「奇術師?」
改めて真人はその男の言葉に問いかける。
「はい、そうです。奇術師です」
奇術師なんて聞いたことない。まだ魔術師でさえもあったことがないのに…。
どんなことをするんだ!?
「正確にいえば旅する奇術師ですが」
正確にっていっても旅してても旅してなくても奇術師は奇術師だろうが。
「ちょっと驚いているようですね。
やっぱり奇術師なんて言葉聞きなれていないみたいですから
ちょっとだけ実力行使です」
そういって男は2人から数メートル離れた場所へと歩いて行った。
何をするんだろうか。2人の緊張感はしだいに高まっていった。
すると男は立ち止まりこちらへと振り向いた。
「さぁこちらに何の変哲もない布切れがあります」
男は懐から言ったとおり布切れを取り出した。たしかにただの布切れだ。
「この布きれ、実はいろんなものを隠し持ってしまってるんですね悪い子なんですよ」
なんだ。手品!?これって手品だよな…。
「だから今からこの布をしつけないといけないんです。
いつも強くはたくと一個ずつ何か隠しているもの出してくれるんですが
今日は何を出してくれるんでしょうか!?」
そういって男は右手を高く振りかざし左手に持っていた布に強くたたきつけた。
すると、地面に何か落ちた。
それを男が拾い上げる。
「今日は、なんと真人さんの電子地図でした!」
「え!?なんで?」
思わず声を上げる。
すると男がこちらに近寄ってきて電子地図を真人に手渡しした。
「はい、どうぞ」
「ど、どうして?」
「タネを明かしたら面白みもなんもなくなってしまう。だからみんなはいろんなものを隠すんです」
「はーい!今日の奇術はこれまでです。ありがとうございました」
男が頭を下げる。
いちおう、拍手しとかないと思い手をたたく。
「どうでした!?僕の奇術」
奇術というより手品だろ。
「こうやって人を驚かして楽しませることが僕の役目、僕の仕事なんです」
つまりおれたちの世界でいうマジシャンみたいなものか…。
それを知って少しがっかりという気持ちとともに安心もした。
これ以上脳に変な言葉を詰め込んだらパンクしそうだから。
「でも、なんで俺の名前がわかったんですか?それも奇術ってやつなんですか?」
「勘だよ!勘」
そういって、男はさっき座っていたところまで戻り再び腰をかけた。
勘って…。勘じゃぁ人の名前は当てられないだろう。
「勘であてられるもんですか!?奇術を使ったんじゃないんですか?」
真人は少し真面目な顔で質問する。
その様子を見て、男もまじめな顔になり
「さっきもいったけど、タネを明かしたら面白みもなんもなくなっちゃう。
だから、みんなはいろんなものをいろんな手段で隠す。
でも…逆に考えてみればその隠されたものを探すのも面白いんじゃないかな
隠されていたものが自分自身に害のあるものだとしても
それでも、きっとそれは君たち自身のためにはなるとおもう。
君たちはたまたま殺傷という箱を開けてしまった。
君たちは望んで開けたんだろう。どういう形であれ。
箱は望まなければ何一つ開くことはない。
箱がほしくないならその場にじっとしてればいい。
だけど、そうすると何も変わらないままずっとその場にいるだけ…。
箱はたくさんあるんだ。だからまだまだ君たちが望めば
たくさんの箱を手に入れることができる。
今回手に入れた殺傷っていう箱もきっといつか役に立つ時がくるよ
この世界に意味のないものなんて一つもないんだから…」
そういうと、男は立ち上がった。
男の後ろにある太陽は男とどうかしているように見えた。
いや、むしろ男が太陽だ。といっても過言ではない。
そのまま、男は後ろの太陽に向かって歩いて行った。
右手を上げながらじゃぁなと無言のさよならをしながら…。
そんな様子を2人はじっと見ているだけだった。
あの男は本当にただの奇術師だったのだろうか…。
なんだかさっきからそんなことばかり考えながら歩いていた。
箱か…。
俺たちが手に入れた殺傷という名の箱は俺たちをどこへと導いてくれるのだろうか。
俺にはまだその答えを見つけることは出来なかった。
太陽の光が目にしみる。
俺たちはいつの間にかあの男の後を追いかける形で歩いていたのだった。
相も変わらず草原の風は強く吹き付けて草花を揺らしている。
あの奇術師からもらった果物のおかげで空腹は免れている。
あとは図書館へと向かうだけだ。
電子地図はこの方角を示している。
きっともうすぐ着くはずだ。
真人は太陽に向かってそうだろ?っとなげかけてみた。
どこか遠くの森の中…。
木の葉の生い茂る森の中で一匹、いや1人の精霊が先を急いでいた。
重大な知らせってなんだろう。
モ―ジは知らせの者の慌てふためいた様子を見て
少し不安になっていた。
父上の墓に何かあったんだろうか…。
この森を抜ければユグドラシルの木までもうすぐだ。
モ―ジの足の運ぶスピードがだんだんと上がっていく。
森を抜けた。
広い草原が広がっていて、その真ん中に世界樹ユグドラシルがたっている。
ユグドラシルは空高く伸びており、その先端を見たものはいまだにいない。
雲を突き抜けてはるかかなたまで伸びているのだから。
その木に向かってモ―ジは全速力で向かっていった。
モ―ジが世界樹までたどり着くと、兄のマグニが出迎えた。
「早く来るんだ!モ―ジ」
マグニの表情を見て、モ―ジはただ事ではないと察し、急いで世界樹の中へとはいって行った。
世界樹の中は大きな空洞になっており、その中でモ―ジやマグニたちは生活をしている。
世界樹の入り口の大きな木製の扉が閉まった。
「きましたか!モ―ジ様」
「何事なんだ!?」
年老いた男がモ―ジを急いで会議室まで案内する。
「実はとても大変なことが起きてしまいまして…」
「それはなんだと言っているんだ!」
「とりあえず、会議に出席なさってください。そうすればだいたいのことはわかるかと」
そういうと、その男は大きな扉を開けた。
「あぁモ―ジ様がいらっしゃった」
「モ―ジ様だ」
モ―ジが会議室に入ると、一部の人々がモ―ジの帰宅を待っていたかのように
喜んでいる。
会議室は真ん中に大きなテーブルがあり、その周りに人が座っている状態だった。
一番奥にいるのがモ―ジの母、ヨルズだ。
「モ―ジ、座りなさい」
ヨルズが一人険しい顔をしながらこっちを見ていた。
モ―ジは母の言われたとおりに席に着いた。
隣にいた兄のマグニにモ―ジはささやいた。
「いったい何が起きたというんですか」
「あぁ、実はわれわれの子孫が住んでいたというアルフヘイムに莫大な力の反応を探知し
検査役がその力の元を調べたところ
われわれの英雄オーディン様の魔法反応が出たんだ」
「え!どういうことですか!?」
「つまり、われわれのおじいさまがまだ生きていたということになる」
モ―ジとマグニの祖父、オーディンは精霊たちを
この地へと導いたいわば精霊たちの英雄といわれている人だ。
だが、精霊たちをこの地へと案内してからオーディンは結婚し、子供を産み
どこかへと消えてしまった。
だが、今日ここにオーディンが生きているという知らせがきて
精霊たちは驚きふためいているのだった。
この世界樹の葉はすべてオーディンの魔法の結晶だと言われている。
その葉っぱと同じ魔法の波動が検出されたのだ。
では、なぜ今となってオーディンの魔法の波動が現れたのだろうか…。
「みなさん、静粛に!」
ヨルズが会議室内を治める。
モ―ジの父、トールが死んでからというもののヨルズがずっと
この地を治め続けている。
「さぁ、今回の事態をおさらいします。
今朝検査役が月に一度の九つの世界の状態を調べているところ
われわれの子孫が住んでいたといわれるアルフヘイムに英雄オーディンの
魔法反応が検出された。
オーディンはもう何百年も前の精霊。
しかし、今こうしてオーディンの魔法反応が現れたということは
オーディンが復活したということになる。
これは我々にとってはとてもありがたいことだ。
しかし、今のオーディンの状況がどうなっているのかまでは確認できない。
よってアルフヘイムにわが子供たちを派遣し、オーディンの無事を確認し
この世界樹ユグドラシルまでお連れになるということでどうかな?みなさん」
え!?ちょっと待ってよ。なんで俺が行くことになるんだ?
モ―ジは兄に助けを求めるが兄のマグニは決心を固めたらしい。
まっすぐ前を向いていた。
会議室内が騒がしくなっていった。
賛否両論が飛び交い、議決は明日にすることになった。
会議が終わり、世界樹ユグドラシルから一人早々に出て行った若者がいた。
モ―ジだった。
モ―ジは母ヨルズの意見に不満を抱いていた。
なんで俺なんだろう…。
モ―ジは父トールの墓へと向かっていた。
トールの墓はユグドラシルから離れた森の中にある。
さっき、モ―ジはそこにいたのだった。
というより、いつもあの場所にいる。
なんだか落ち着くんだ。
そうやっていつも父の墓の前で昼寝をするのがモ―ジの日課だ。
もう日が暮れてあたりも暗くなり始めていたところだったが
無意識のうちにモ―ジの足は父の墓へと進めていた。
しばらく歩き、父トールの墓についた。
父の墓は神秘的な場所で、夜に来ると月が墓石を照らし
昼に来ると太陽がいつも墓石を照らしていた。
見上げるほどの大きな墓石が絶壁にもたれかかってたっている。
その墓石の前にちょうどいい柔らかさの草花が生えており
そこでいつもモ―ジは昼寝をしている。
そのいつもの場所であおむけに寝転がると
木々の間から無数の星空が見えていた。
きれいだなぁ。
モ―ジはこのまま全部忘れてこうして寝転がっていたいと
思っていた。
モ―ジの父トールはそれはそれは勇敢な戦士だった。
何度もこの地の危機を救ってきた。
祖父の血を受け継いでいるだけはあるとみんな感心していた。
父はいつも言っていた。
「幸せって何か?そう考えたことはないか?
幸せは目に見えるものじゃない。感じるものだ。
わしはそこまでしかわからない。
だが、今わしはとっても幸せなんだ。
どういうことかわかるか?モ―ジ、マグニ、シヴ」
「わかりませんよ、お父様」
「ハハハ、そうか…おまえらもいつかわかる時が来るその時までの辛抱だ」
そういって父はおれたち三人の頭をなでて戦場に向かっていく。
その時のおれは今から死ぬかもしれないというのになんで幸せなんだろうか。
そう思っていた。
今もそうとしか思えない。結局わからないことばっかり残していって
しんじゃうんだから…。
モ―ジは父の墓を眺めながらそう思った。
「あ!やっぱりここにいた」
その声に反応してふと振り向くと、1人の少女がこちらへと向かって歩いていた。
シヴだ。
シヴはモ―ジの妹だ。
いつもどこで何をしているのかわからないやつなんだけど
ときどき、こうしてこの墓場で会うことがある。
性格は温厚。育ちがいいせいか少し天然も入っているが、自分の妹ながらなかなか可愛い。
白いきれいな髪をしており肩ぐらいまで伸びている。
くせ毛なのか髪がカールしているが、それもお嬢様らしくていい。
「今日はここで何をしているの?」
「いつもと同じ、昼寝だよ」
「もう昼じゃないよ。昼じゃないのに昼寝できるなんてモ―ジってすごいのね」
何言ってんだ。こいつは…。
「あぁ、ごめん昼寝じゃなくてねっ転がってるだけだった」
「なんだ。そうだったの!ねぇ私もねっ転がっていい?」
「あぁ、いいけど」
そういって、モ―ジの隣にシヴがねっ転がった。
「おじぃさまの魔法反応が出たんだってね」
「そうだけど、何で知ってるんだ?」
「お母様がおっしゃってたの」
微笑みながらシヴが言った。
「そうか…。じゃぁおれがアルフヘイムに行くってことも知ってるのか?」
「うん、知ってる。だから今日はお父様に二人の無事をお祈りしようかと思って」
もう、お母さまは無理にでも俺たちは兄弟を行かせる気なのか…。
なんでだろうか。
「なぁ、シヴ。なんでお母様は俺たち兄弟をアルフヘイムに行かせたがってるんだと思う?
俺たちじゃなくても他にも有力者がいっぱいいると思うんだ」
少し、間が空きシヴが口を開いた。
「お母様にもお母様なりのお考えがあると思う。きっと…。
そうでなきゃ、かわいい息子たちをあんなところになんか行かせはしないわ」
「そうだよな…」
そういって、二人はしばらく間空に浮かぶ星たちを眺めていた。
明日の会議ではきっと無理矢理にでもお母様は俺達兄弟をアルフヘイムに向かわせる。
お母様はなにを考えてなさるんだろうか…。
モ―ジはそのままその場に眠りについてしまった。
| 06 | 2026/07 | 08 |
| S | M | T | W | T | F | S |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 2 | 3 | 4 | |||
| 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 |
| 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 |
| 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 |
| 26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 31 |

