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さきほど失恋回数十回目を無事に終えた真人は公園のベンチで一人たそがれていた。
無邪気に遊ぶ子供たちの姿が目に入り、じっと眺めていた。
はぁ…。俺ってどうして毎回こうなるんだろう。
そう、真人の毎回ふられる原因は親父の血を受け継いだせいなのか
発症する自称「光男ブレッドフォーム」のせいだと思う。
光男は真人の父親の名前だ。母親がいたころはあんなではなかったのだが
数年前、母親がゆずと俺を置いて出て行ったっきり親父は
あぁなってしまった。きっとおれたち兄妹がさびしくならないようにと
気を使っているのだろうが最近そうも思えなくなってきた。
なんだか親父自身がとっても楽しそうにしているから…。
そんなことを思いながら腕時計に目をやった。
11時30分。もうこんな時間かぁ。
その時、真人の前に一つのボールが転がってきた。
それを拾い上げて立ち上がると目の前に一人の少年が立っていた。
何歳ぐらいだろうか、ゆずと同じぐらいかなぁ真人が手に取ったボールをじっと見つめている。
真人は少年がボールを返してほしいのだと察し、ボールを少年に差し出した。
「ありがとう」
すると、後ろに大きな影が見えた。
「すいません、ありがとうございます」
きっとその少年の母親だろう。
少年の母親は少年の手をつかみ公園の外へと出て行った。
母親か…。
どんな顔してるんだろう。
おれの母親…。
「あったよ。あった。だいぶ古い本みたいなんだけど
もうすぐ処分されるんだ。きっと読んだことないから特別に今日だけ
貸してあげる」
係りの人がようやく戻ってきた。
かなり待ったと思う…。
係りの人は新にほこりを少しかぶった本を差し出した。
「ありがとうございます」
そういって、会釈して新はお気に入りの席へと戻って行った。
相変わらず、つめたそうな風は外の植木をいじめていた。
そんなことより早く本を読もう。
と、新は本を開いた。
その瞬間新はさっきまでの図書館の暖房のきいた温かい空気が
一変して、外のとても冷たい空気に変わったのがわかった。
新は本に向けていた視線を周りに投げてみた。
「ここは…どこだ---」
母親…。
真人の頭の中はいまや母親のことで頭がいっぱいになった。
さっきふられたことも忘れて幼少期のころの記憶を必死に引き出そうといる。
いまや、もう周りの子供たちの声も聞こえなくなってきていた。
とうとう、真人は四つん這いになってしまった。
目をつむり必死に思い出す。だけどやっぱり
「あぁ~わかんねぇー」
「何がわからないのよ」
さっきまで何も聞こえていなかった耳に誰かの声がはいってきた。
少しの間、静寂が訪れた。
「だから、何が分かんないのかってきいてるでしょ、つかどけなさいよ」
この声は空耳ではない。そう思った。
なので、真人はつむっていた瞼をゆっくりと開けてみた。
すると、四つん這いになっていた真人の体の下にさっきの声の
主らしき目をくりくりさせたショートカットの少女がいた。
その少女と目が合った。
一秒後、真人は顔じゅうが熱くなった。
二秒後、真人の体は少しの間宙を舞った。
三秒後、真人は堅くて冷たい床らしき場所に鼻血を垂らしながら寝ころんだ。
どうなってんだ…。
真人はぽかんとしていた。
こんなシーンなんてマンガでしか見たことがない。
しかも、さっきまで空があった場所には黒ずんだ冷たい感じの天井が居座っていた。
「どうなってんだ…」
真人の口はそういうしかできなかった。
「どうなってんだ。はこっちのセリフなんですけど」
さっきと同じ感じの声がまた聞こえた。
「いったいどうやったらあの場所からこんな寒い牢獄みたいな場所に着くのよ!」
牢獄?たしかにそう言われてみると牢獄みたいだ。
よくみると壁も天井と同じような感じだ。
この場所にあるのは、一枚の毛布と一人の漫画に出てきそうな少女だけ…。
一通りあたりを見回してから改めて出た言葉は
「夢か。なんだ夢なんだな」
真人のさっきまでの表情が柔らかくなってきた。
「夢なわけないでしょ、ちょっと強くぶちすぎた?」
一瞬で希望は断たれた。
「じゃぁなんだっていうんだよ漫画少女」
真人は立ち上がり、どなりつけた。
「漫画少女ってなによ。私にはちゃんと早月っていう名前があるのよ変態」
早月は立ち上がって真人に対抗した。
「変態だと、もとをただせばお前がいきなりそんな場所に現れるのがいけないんだろうが」
「現れたのはあなたのほうでしょ変態」
「また変態っていった。俺には真人っていうすばらしい名前があるんだよ」
「あーらすばらしい名前だことあたしの名前にはかなわないけどね」
「なんだとぉ」
「やんのかぁ」
がんのつけあいをし始めた。と、そのとき唯一壁のほぼ天井に近い場所にある窓らしき場所から
声が聞こえた。
「おい、何をやってるんだうるさいぞ」
二人はいったんけんかはやめ、窓らしき場所から聞こえてくる声に耳を傾けた。
「ふぅ…ようやくおさまったか、今からお前らをここからだす
変なまねはするなよ抵抗したら殺せとの命令だからな」
そういうと、窓らしき場所から床までが一瞬で横に開き多くの光が差し込んできた。
そこから大人だと思われる人が数人出てきた。
その光景を見て真人は自分のほっぺたをつねってみた。
変わらない…。
なんだ、やっぱり夢じゃないのか。どうなってるんだ。
真人は少し考えてみたが、まったく答えは出なかった。
そうこうしているうちに手を後ろにまわされた。
あのマンガ女もおんなじようにやらされているいい気味だ。
というよりこの人なにしてんだ。
普通ここはロープとか手錠とかで腕固定するんじゃないのか?
真人の後ろにいる男はロープでも手錠でもない何か別のものを持っている
よく見ることができない。
「おい、前を向いていろ」
「は、はい」
急に言われたので真人の声は恐怖を感じさせるような声だった。
すばやく前を向き、後ろで起こっていることの想像をふくらましていった。
そんなことをしている間、というより一瞬で後ろの男は真人の視界に入ってきた。
腕は…。
そう思い、真人は腕を動かそうと試してみた。
だけど何をされたのかもわからないが、とにかく腕は動かなかった。
縛られている感覚もない。
「ほら、行くぞ」
そう男に言われ、真人は早月と一緒に男たちに連れて行かれた。
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