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炭酸好きな光男お兄さま、元気にしているでしょうか。
私は元気です。素晴らしい自然の中で一生懸命にお兄さまのいる元の世界へと
戻る手がかりを探しているところです。まだまだこの世界には知らないことがたくさんあります。
魔法のこと、精霊のこと、私にはまだお兄さまが冬に妹に夜中買わせてまで炭酸のジュースを
飲む理由がよくはわかりません。ですが、きっと今思っている不安や疑問も徐々に
いい方向へと進んでいくと思います。なんだか頼りない男が一名旅に同行しておりますが
きっと彼も立派に成長をしてくれることでしょう。
お兄さまの健康を祈っております。
早月より
2人は魔法都市を出発していた。
魔法都市の外にはさっきの近未来の世界とは違い、壮大な草原が広がっていた。
青い空、白い雲、輝く太陽、きれいな小川、きれいな空気。
絵にも描いたような素晴らしいこの景色。さっきまでいた近未来の暮らしにさえ
寂しさを覚えるほどだった。さっきの衝撃的な出来事を洗い流して
もらえるという錯覚に陥るほどだ。
真人はほんの数時間…。この世界に来てからは時間もわからないのだがほんのちょっと前の
出来事を思い出し、また感傷にひたっていた。
後ろから追い風が吹いてきた。
その風はまるで、真人の後ろめいた心に鞭を打つかのように強く吹いている。
さっきのあいつと同じ…。
真人は後ろから吹く追い風の鞭など気にせずに再び感傷にひたっていた。
真人が吹き抜ける風をにらみつける。
「キャー」
すると、後ろのほうから何やら聞き覚えのある声がした。
さっき俺の左ほほを思いきりひっぱたいた漫画女。
真人は叩かれた左ほほを右手で押さえながら声がするほうをにらみつけた。
すると、一瞬で真人の視界が暗くなった。真人は気が動転し、尻もちをついた。
「おぉ、ナイス!」
何がナイスだよと思いながら、真人は視界が暗くなった原因となる物体を顔から
はがした。
「なんだよこれ」
真人ははがした物体になにやら文字が書かれていることに気がつきその文字に目をやった。
「炭酸好きな光男…」
そこまでいったころには次の文字が読めない状態になっていた。
「何読んでんだよ!」
早月が声を張り上げる。
「え、だって気になるじゃん」
真人は改めて負った右ほほの痛みに耐えながら必死に答弁する。
「さっきユダさんから小さい日記帳もらったの。日記つけようと思ってね」
こんな事態なのに、こいつは何をしようとしているんだ。
「そしたら昨日とか今までのぶん書いてないなって思ってあそこの切り株で日記つけてたってわけ」
早月は少し遠くに見える少し大きなきりかぶを指さしながら言った。
なんかのんきだ。この景色に負けないぐらい壮大に元気だ。
「ユダさんったら日記帳に変な紙挟んでおくからそれに気がつかないで風が吹いて…」
そこまで聞いたらもうきかなくてもわかった。真人は早月に右の掌を突き出し
ストップの合図を出した。するとふと、真人は思いついた。
「でもさぁ、魔法都市にある日記帳なんだから紙に直接書き込むなんてことしなくても
携帯みたいな魔道具があるんじゃないの?」
そう、わざわざそんな古典的なことをしなくてもあそこは魔法都市なんだ。
携帯のような魔道具ぐらいあってもいいはずだ。それでピピピっと日記をつけていけばいいじゃないか。
真人は心の胸の奥に確信を抱いていた。
「手書きがよかったの!だからユダさんに無理いってお願いした」
早月は日記帳らしき厚くて小さな本を自分の内ポケットにしまった。
内ポケットあるのかよその服…。
真人は早月の服をじーっと眺めていた。
「なによ、変な目で見ないでよね」
その様子を見た早月が身を引きながら言った。
そういわれ、真人は立ち上がりあわてて前を向いた。
立ち上がってみると相変わらず風が強く吹いていた。
今度は心ではなく体に鞭を打っているのだろう。真人は早月よりも少し先に足を運び始めた。
しばらく歩いた。ユダさんからもらった地図によるとまだまっすぐ行けばいいらしい。
しかしさっきからずいぶんと歩いたのにまったく景色が変わらない。
何もないのだ。さっきは感動していたが逆に何も変わらない景色を見ていると
うざったく感じてきた。そんなことを思いながら真人は歩いていた。
真人の少し後ろを歩いていた早月はだいぶ疲れているみたいだ。
ペースがだいぶ落ちてきている。
そろっと休憩するか、そう思ったその時視界に大きな木が入り込んできた。
なんだ?あの大きな木は…。
この位置からみても相当大きい。そばまで行ったらどれぐらい大きく見えるのだろうか。
真人がそう思いながら立ち止っていると、早月が真人を追い抜いて行った。
「ほら、早く行くよ」
おそらくかなり身体的に疲れているのだろう。
声には活気がなく、早く図書館にいって休みたいと顔に書いてあるみたいだった。
残念ながら図書館はあの大きな木とは方向が違っていた。
なんだか興味そそられるものがあの木にはあったが
真人は体を90°回転させると早月の後を追って行った。
日本国民が埼玉県と称するその土地の地下深く…。
地下鉄などの地下施設を避けて作られたそのつくりはまるで迷路のような構造をしている。
そんなへんてこな施設は鉄製でごつごつしている。しかしところどころにいろんな機能が付いていて
まるで侵入者の立ち入りは断じて許さないと言っているかのようだ。
日本の今の技術ではとてもじゃないがこんなハイテクな施設は作れないだろう。
ニケはそんなとんでもない建物の中でさまよっていた。
黒いパツパツとした光沢のある服を全身に包んでいた。
「くそぉ、どこだ」
まわりを警戒しながら独り言を言っていた。
ニケは目の前の扉を躊躇なく開き、部屋の中を探索していた。
今は訓練中だからまだここらへんに寝泊まりしているやつらは帰ってきていない。
ニケは頭の中に叩き込んだ予定表と自分の腕時計の時間を照らし合わせる。
薄暗い部屋の中でニケは男くさい下着やらなんやらでちらかった床の上で足を進めていく。
静かに、音を立てずにまるで忍者にでもなった気分だ。
ニケは部屋の奥にあるクローゼットに手を触れた。
クローゼットは周りの景観とはあっておらず木でできていた。
この中にあの人がいればいいけど。ニケは毎回味わうこの緊張感がいつの間にか
快感に覚えてきた自分を抑えながらクローゼットの扉に手をかけた。
いてください…。心の中で強く願い、音をたてないように力強く扉を開けた。
ここも違ったか。ニケが開けたクローゼットから出てきたものは汚い男の下着ばかりだった。
どんだけ下着持ってんだよ。そう思いながらその部屋を後にしようとしたとき
「待ちな」
後ろから声がし、後頭部に何かが突き付けられている感覚があった。
ニケは足を止めた。もっとも恐れていたことが起きてしまった。
兵士との接触…。だがなぜこいつはこの部屋にいたんだ?
ニケの額には冷や汗が滲んでいた。
「僕をどうするつもり?」
ニケはゆっくりと口を動かした。
「どうしようかなぁ?」
この低くて鈍い声は男の声…。それもそうかここは男の寮区域なんだから。
風が吹くことさえ許されないような空気の中、ニケはつばを飲み込み、
死の覚悟をした。
幾度となくこのような場面は切り抜けてきたニケだったが
今回はどうも状況が悪い。
もう、どうすることもできないのだ。
「頭を思いきり打ち抜くか、それとも足の自由を奪ってゆっくり痛みつけながら殺すか…」
「一つ質問していい?」
ニケはまたしてもゆっくりと口を開いた。
慎重に、慎重にこの男に隙ができるまでの辛抱だ。
「あぁ!?あぁいいぜ、後悔して地獄に行くのはなんだからな」
「なんで僕をすぐに殺さないの?」
「は!?何言ってやがんだ?早く死にたいのか?」
「違う、普通侵入者を見つけて捕獲したら拘束するでしょ!?
それから上司に連絡し、指示をあおる。それが普通でしょ?
最悪でもすぐに殺すはず…。さらにいうとこの時間はあなたたち兵士は訓練の時間のはず。それに…」
そこまで言ってニケは質問をやめ、男のほうを振りかえった。
兵士は急に振り返ってきたニケに動揺の表情を隠せないでいた。
「あなた、なんでさっきから拳銃を握る手が震えているの?」
そこまで言うと、動揺している兵士の懐に風のように入り込み拳銃を握る手を右手でチョップし
兵士の拳銃を床に落としすぐさま兵士の右手を自分の右手で体の後ろに回させ右足で兵士の
体を押さえつけた。
兵士は情けない声を出し、床に顔面を押し付けられた。
兵士が顔を押し付けられた先には誰かの下着が落ちておりそのくさい匂いで
失神しそうでもあった。
「すいません、すいません」
匂いと体の痛みに耐えられなくなった兵士は必死の形相で許しを乞う。
にらみを利かせていたニケは一安心し、兵士のもう片方の手を握り兵士の
右手と同じように後ろにまわした。
「な、何をする気だ…でしょうか?」
「決まってるでしょ、君を拘束するんだよ」
そう言いながら近くにあった汚れた男のTシャツを手に取り兵士の両手を縛りつけた。
「そんなぁ」
「あたりまえだよこれくらい。降参したからって一度は自分に銃を向けたんだからね危険人物だよ」
情けない声を張り上げる兵士に、静かに話しかける。
「俺、実は訓練サボってたんだ。だからこんなところにいた」
「あ、そうなんだ」
そう言いながら兵士の両足を近くにあった汚いパンツで縛り付ける。
「ほら、白状したでしょ。だから許して…あっおれの名前はジ―リだ」
もう、必死になっている。ニケは足を縛り終えて、今度は口を止める下着を
探していた。
やっぱり下着でそろえなくちゃ。ちょっとS気が出てきたニケであった。
でも、あんまりゆっくりもしてられない。あと三十分で兵士たちが帰ってくる。
それまでにこのジ―リとかいう男をなんとかしなくては…。
ニケは自分の腕にしてある腕時計を眺めながら思った。
「おれ、ピッキングできるんだぜ。だから助けてくれよ」
「ピッキングができるからって許されるわけないでしょ」
ニケはお手頃な下着を見つけながら言った。
たしかに僕はピッキングなんてできないけど…。
「じゃっじゃぁ、あなた様はなんでこんなところにきているんでしょうか?」
敬語になっちゃったよ。ちょっとおかしいけど…。
「ちょっと探し物」
「探し物?その探し物を一緒に探してあげましょうか」
「じゃぁ、ジ―リさん。あなたはこの施設の隠し部屋っていうのを知ってる」
「隠し部屋?」
「そう、あなたたちの寮のどこかのクローゼットが入り口になっているんだけど」
「隠し部屋かどうかはわかりませんが、怪しいクローゼットなら知ってますよ」
「…」
予想外の返答にリアクションに困った。こんなに苦労して探しているのに
こんなさぼり兵士が隠し部屋の入り口らしき場所を知っているとは…。
ニケは汚い下着にも気にせずに床に四つん這いになった。
「どうしたんですか?」
ジ―リも少し驚いている様子だ。必死に顔を上げながらニケのことを見ていた。
「くそぉ、くそぉ、だめだ、だめだ」
淡々とニケがつぶやく姿を見て、ジ―リは静かに顔を上げるのをやめた。
数分後…。
「よし、お前をつれていく。ジ―リ」
ジ―リはうつ伏せという姿勢の苦痛と、ニケの淡々と続く独り言と、顔面近くにある汚い下着のせいで
もうすでに意識はもうろうとしていた。
「どうした?あ、そうだった早くほどいてやらなくちゃな」
急に態度が変わったニケにもうかける言葉すらないジ―リは黙ってほどかれるのを待っていた。
ほどかれると、疲れた表情で背伸びをする。
「ジ―リ、時間がないんだ。早く僕にそのクローゼットを教えて」
「へーい」
声に元気はなかった。
「こっちです」
元気のないジ―リに連れられながらニケは急いでその部屋を後にした。
「この部屋です」
ジ―リに案内された部屋はさっきのジ―リがいた部屋とはなんら変りない兵士の寮の一室だった。
その部屋にジ―リはずかずかとはいっていく
「こんな不用心な場所に本当にあるの?」
「あるんですよね、ここに」
ジ―リは一つのクローゼットを指さしながら言った。
そのクローゼットは木製ではなく鉄製で、しかも鍵穴が扉のとって近くにあった。
たしかにこれは怪しい…。
「この部屋の人たちはこのクローゼットは使わないの?」
「あぁ、使わないんですよね。鍵穴があるでしょ?鍵がなくて…仕方がないんで使用していないんです」
「ジ―リみたいなピッキング能力もった人が開ければよかったんじゃないの」
「それが、ここの鍵穴かなりレベルが高いんですよね…」
「レベル?」
「はい、俺達ピッキング仲間のなかでは鍵穴にレベルをつけているんです」
「1から5まであって、この部屋のレベルは4なんですよ」
「はぁー」
ちょっと感心したような声をだした。
「では、あけますね」
そういってジ―リは鍵穴に何か変な物体をさしこんだ。
「ちなみに、ジ―リはここの鍵穴は開けられるの?」
それを聞いたジ―リがゆっくりと笑みを浮かべた顔をこちらに向けてきた。
「任せてくださいよ。自分で言うのは何なんですがかなりの腕まえって有名なんですから」
そういって、再び作業に戻った。
しばらくするとかちゃっという音が金属音がするとともに
重い扉が開く音がした。
クローゼットの扉が開いたみたいだ。
「あきましたよ」
扉の前にジ―リが立っていた。
ジ―リの後ろには漆黒の闇の入り口があった。
今にもジ―リをその闇の世界へと引き込もうとしているみたいだった。
そのとき、兵士たちの声が聞こえた。
帰ってきた…。
ニケとジ―リの二人はあわてた。ニケはとりあえずあいたクローゼットの中に入っていった。
ジ―リはさぼったことがばれるとまずいのでニケの後を追ってクローゼットの中へとはいって行った。
2人を入れたクローゼットはゆっくりと音を立てながらしまっていった。
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